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医療・健康・介護のコラム
肩の脱臼はくせになるの?
どうも、大関です。ラグビー日本最高峰のトップリーグが行われています。2019年にはラグビーワールドカップが日本で開催されます。前回イングランドで行われたワールドカップで、日本の南アフリカ戦での勝利は多くの日本国民を興奮させました。激しいぶつかり合いはラグビーの醍醐味の一つですが、時にラグビーではタックルした際に肩を脱臼してしまうことがあります。「肩の脱臼はくせになる」というのは、本当でしょうか。どう対処するべきでしょうか。
大学ラグビー選手の肩の脱臼のケースです。
大学1年生のB君はラグビー部です。高校からラグビーを始め、3年の経験があります。ポジションはセンターです。約4か月前の練習でタックルした際、痛みのため肩を動かせなくなりました。練習を中止し、医療機関を受診したところ、肩関節脱臼の診断で、すぐに脱臼を治してもらいました。約3週間、装具をつけて肩の安静を保った後、肩を動かし始めました。肩の調子も回復し、練習を再開しましたが、タックルの際に再度肩を脱臼し、その後も数回脱臼を繰り返しました。脱臼するのではないかという不安感が残り、タックルできなくなっています。
肩を一度脱臼すると、何度も繰り返すケースがよくあります。これは、脱臼した際に壊れた肩の構造が、自然に治癒しないためです。ピンときづらいと思いますので、まず肩の構造から説明します。肩関節は肩甲骨と上腕骨からなっています(下図)。
肩関節は球関節とも呼ばれ、肩甲骨側の受け皿(臼蓋)に上腕骨のボールがのった、けん玉のような構造です(下図)。同じ球関節である股関節とくらべて、肩関節の臼蓋の面積は小さく、くぼみが浅いため、肩関節は広く動かすことができます。しかし、その代わりに不安定になりやすいのです。
この関節で安定性を保つ重要な組織が関節唇です。関節唇は肩甲骨の受け皿の縁を丸く囲み、関節包や靱帯とつながり、複合体として機能します。肩関節が脱臼すると、関節唇は肩甲骨から剝離して損傷します(下図)。脱臼が整復されると、関節は元の位置に戻りますが、関節唇は元の位置に付きません。関節を動かした際に緊張するはずの関節唇と靱帯の複合体が機能せず、不安定になり、再脱臼を繰り返すのです。
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