子どもの健康を考える「子なび」
医療・健康・介護のコラム
発達障害(8)自分のやり方最優先
発達障害では、精神科医で信州大付属病院子どものこころ診療部長の本田秀夫さんに聞きます。(聞き手・松本航介)
中学1年生の女の子のエピソードを紹介します。彼女は、誰からも発達障害だとは思われておらず、少し付き合いが悪いかな、という程度の普通の女の子とみられていました。
ある日、中学の部活で、部員みんなで試合に行くのに、「駅前で集合」と言われました。その時、ほかの女子部員たちから、「私たちは先にコンビニで集まって、それからみんなで一緒に駅まで行こう」と誘われました。
ところが、彼女は何と答えたかというと、「面倒くさいから、私は一人で行くわ」。
中学生くらいの女の子は、グループで一緒に行動するのが好きですよね。駅で集合するときも、300メートルも離れていないようなコンビニにわざわざ集まって、そこから全体の集合場所まで仲良く歩いていく。そういうのが楽しいのです。
そんな女の子同士の付き合いを自分から積極的に断ると、ものすごく変わり者とみなされてしまいます。でも、彼女の場合、それが面倒くさいと感じるのです。そもそも駅で集合するのに、なぜわざわざコンビニに集まって短い距離を一緒に行かないといけないのか。非合理的だ、と考えたというわけです。
その後、彼女は、他の女子部員たちから「あの子、変わってる」と思われ、仲間はずれにされて部活にいづらくなってしまいました。
発達障害の一つ、自閉スペクトラム症の人は、自分のやり方、関心、ペースを最優先させたがる傾向があります。一方で、仲良くなるための臨機応変な対人関係には興味がないか、苦手です。そのため、集団の中で浮いてしまい、場合によっては学校に行けなくなってしまう、ということもあるのです。
【略歴】
本田秀夫(ほんだ・ひでお)
1964年、大阪府豊中市生まれ。精神科医。信州大医学部付属病院子どものこころ診療部部長・診療教授。日本自閉症協会理事。著書に「自閉症スペクトラム」など。
【関連記事】
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。