乳がん
検査・診断
がん治療と妊娠(1)卵巣の一部を凍結保存
その言葉をクリニックの医師から聞いた瞬間、目の前が真っ暗になった。
「子どもはあきらめてください。難しいと思います」
名古屋市の会社員女性(35)が乳がんと診断されたのは2015年のクリスマスだった。リンパ節にも転移していた。その前月に受けた検査でがんの疑いは告げられており、心の整理はできているつもりだった。
ただ将来、赤ちゃんを妊娠できなくなるとは思ってもいなかった。抗がん剤治療の影響で卵巣機能がダメージを受け、妊娠できなくなる可能性が高いという。帰り道に一人で立ち寄った喫茶店。行き交う恋人たちや家族連れの笑顔が窓越しに見えると、ポロポロと涙がこぼれてきた。
「まだわからないよ。調べてみたら」。患者会で知り合った女性がん患者に助言を受けたのは、年が明けた16年1月。その患者は妊娠する可能性を残そうと、卵子を凍結保存していた。
「まだ可能性があるかもしれない」。かすかな望みを感じた女性は医師の紹介で、岐阜大学病院(岐阜市)を訪ねた。周産期・生殖医療センター長の古井辰郎さんが、妊娠する能力の温存に関するカウンセリングを行っているからだ。
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