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脚や腕がむくむ「リンパ浮腫」、軽症なら高確率で完治

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脚や腕がむくむ「リンパ浮腫」、軽症なら高確率で完治

 埼玉県坂戸市の大江 路芳みちか さん(43)は、2014年3月に子宮がんの手術を受けた。美容師として職場復帰したが、長時間立ったまま仕事を続けたところ、左脚のむくみや腫れがひどくなった。疲労感も強かった。診断はリンパ浮腫。一生治らないと思っていたが、15年7月に外科治療を受け、現在はほぼ完治した。

 リンパ浮腫は、リンパ液の流れが滞って脚や腕にたまり、むくむ病気。たんぱくや白血球などを運ぶリンパ液は、感染やがんが全身に広がるのを防ぐが、うまく流れなくなると、細菌に感染して脚や腕全体に炎症が広がる「 蜂窩織炎ほうかしきえん 」が起きやすくなり、重い臓器障害を引き起こす敗血症で命を落とすこともある。

 患者の多くは、乳がんや子宮がんなどの手術を受けた女性だ。リンパ節を取ったり放射線を当てたりする治療により、リンパ管が傷み、リンパ液が皮膚の下にたまって浮腫となる。手術後の発症率は、乳がんで約10%、子宮がんは約25%とされ、毎年約1万人が発症しているとみられる。

まず圧迫療法

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 治療は、弾性ストッキングなどを着用する「圧迫療法」が中心。専門的な医療技術が必要なマッサージ(リンパドレナージ)や運動療法と一緒に行うこともある。リンパ液の流れを改善し、症状の進行を遅らせる効果がある。それでも改善しない場合、「リンパ管細静脈 吻合ふんごう 術(LVA)」と呼ばれる外科治療が選択肢となる。

高難度の手術

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 LVAは、流れが悪いリンパ管を静脈とつなぎ合わせ、リンパ液の流れを改善させるものだ。直径0・5ミリ・メートル前後のリンパ管と静脈をつなぐため、長さ3ミリ・メートルほどの針と髪の毛の半分より細い糸を使う。肉眼で見えにくい細部を拡大するため、顕微鏡をのぞき込んで行う高難度の手術だ。

 どこの病院でも受けられる治療ではないが、大江さんの手術を担当した聖マリアンナ医科大学(川崎市)形成外科助教の関 征央ゆきお さんは、「最近は顕微鏡の性能が上がり、針や糸の改良も進んだため、手がける医師が増えてきた」と言う。

 手術前に、リンパ管や静脈の位置などを検査で確かめる。圧迫療法も続け、できるだけ良い状態を保つ。皮膚を2~3センチほど切開する手術のため、局所麻酔で行う医師もいる。つなぐ本数などで異なるが、通常は3時間前後で終わる。安静のため、脚の場合で1週間ほど入院が必要となる。

退院後も弾性ストッキング

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 退院後も圧迫療法は継続する。弾性ストッキングなどによる圧迫を段階的に弱め、着けなくても問題がなければ完治となる。症状が軽い方だった大江さんは、手術から1年半後に弾性ストッキングから解放された。「体はもちろんだが、精神的に楽になったことが大きい」と笑顔を浮かべる。

 蜂窩織炎の発症頻度は、手術前と比べて手術後1年間で約8分の1に減った、との学会報告もある。一方、手術してもリンパ液がうまく流れなかったり、次第に流れが悪くなったりするケースも出ている。

 すべての患者に効果があるとは限らないが、同大形成外科教授の梶川明義さんは「重症だと完治することはめったにないが、軽症であれば高い確率で治る。圧迫療法で症状が改善しなければ、手術も選択肢として考えてほしい」と話す。(赤津良太)

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