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医療・健康・介護のコラム

シリーズ『ケアをひらく』(医学書院)…「ケア」幅広く捉え直す

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シリーズ『ケアをひらく』(医学書院)…「ケア」幅広く捉え直す

「ケアをひらく」シリーズと白石さん

 医学書院が刊行するシリーズ「ケアをひらく」が、話題作を出し続けている。介護や看護といった「ケア」の問題を幅広く捉え、人文系の本の読者層にも支持を集める。国分功一郎『中動態の世界』は、今年の小林秀雄賞にも決まった。

 医学書院は、医師や看護師向けの専門書などを作っている。「『ケア』は人と人の行為。分野を超えて解放したい気持ちがあった」。シリーズを担当する白石正明さん(59)は振り返る。

 2000年の広井良典『ケア学』をはじめ、全身の筋肉が次第に動かなくなる難病、筋 萎縮いしゅく 性側索硬化症(ALS)の母を介護した記録をつづり、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した川口有美子『逝かない身体』。脳性まひを抱える小児科医、熊谷晋一郎さんの『リハビリの夜』は、新潮ドキュメント賞を受けた。そのほか精神科医の春日武彦さん、建築家の坂口恭平さんなど様々な著者が執筆し、31作を刊行した。

 北海道浦河町の精神障害者ケアの拠点を紹介した『べてるの家の「非」援助論』(浦河べてるの家著)の刊行が大きいと振り返る。「『これができる/できない』といった尺度で考えるのではなく、その尺度自体を変える方が楽だと考えさせられた」。その後の本作りのベースの考え方になった。国分さんの著書でも、「受動」「能動」といった既存の軸を、「中動態」といった考え方にずらしているという。

 どんな人が優れた著作を執筆できるのか。白石さんは「現場の看護師を尊敬できる人。まとまらない言葉にじっくりと耳を傾けられることが大切です。まとまらない言葉に大切なものが潜んでいるから」と答えた。(待田晋哉)

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