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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

コラム

線維筋痛症と「眩しさ」

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レディー・ガガさんで注目を浴びる線維筋痛症

線維筋痛症と「眩しさ」

 米国の人気歌手、レディー・ガガさんが線維筋痛症だと公表したことで、原因不明のこの病気が脚光を浴びています。

 線維筋痛症は、欧米では1950年代から知られていましたが、日本では一部の医師しか認識しない時代が長く、ようやく2003年に厚生労働省が研究班を発足させました。

 私がこの病気に注目しているのは、眼球そのものに問題はなくても、 (まぶ) しさや目の痛みのために目を開けて見ることができない 眼球使用困難症候群 の重症例に、しばしば体の痛みが起き、線維筋痛症と診断されている例があるからです。

 この11月の日本神経眼科学会(横浜市)で、最重症例の眼球使用困難症候群8例について報告します。全例私が診察しました。皆、終日、弱い光でも目から入ることを拒絶せざるを得ない生活をしている、重症な方々です。部屋を暗くして両眼を閉じ、それだけでは足りずにアイマスクや遮光眼鏡をかけ、外光が入る部屋ではカーテンや帽子が欠かせない、という状態です。それほどまでに光を防御した格好をしていてさえ、日中は外出ができません。

 8例の内訳は、男性3人、女性5人で、年齢幅は26歳から67歳、40歳未満の方が6人います。

 この中で、からだの痛みの強い人が5例、頭痛を持つ人が2例あり、うち2例は線維筋痛症の診断も受けています。

 線維筋痛症は、痛い部位が次々と変わる慢性疼痛が特徴で、関節痛、頭痛、筋肉痛、疲労感、 倦怠(けんたい) 感、めまいなどの身体症状が出ます。光や音やにおい、気温や気圧の変化などを契機に痛みが強くなるという現象もよくみられます。わずかな光に強い眩しさを感じる「 羞明(しゅうめい) 」がある例も多く、米国の報告では70%を占めます。

 先に挙げた5例の中心症状は羞明です。一方、線維筋痛症側からみれば、合併症に羞明がある、と解釈します。これは、もしかすると同じ病気を異なる立場から見て診断しているということかもしれません。

 また、線維筋痛症は、慢性疲労症候群や化学物質過敏症などと臨床症状に類似点が多いようで、これも、そういう解釈ができるということなのかもしれません。

 いずれも感覚系が過敏な状態にあり、感覚をコントロールする神経機構に不調が存在するという共通項があります。

 日本リウマチ財団のホームページによると、線維筋痛症は日本では一般人口あたり1.7%の有病率(患者数約200万人)。今年 8月24日のコラム でおかしな制度だと指摘した難病指定基準の「人口の0.1%」を超える高頻度ですから、国は難病に指定していません。

 一方、実際に医療機関を受診している患者数はわずか4千人前後という数字があり、医師の無理解や診療拒否が背景にあると思われます。

 これは、痛み、しびれ、眩しさといった、測定しにくく、画像診断がほとんど役立たない感覚異常を軽視してきた国や医療界の姿勢と無縁ではないでしょう。この国が「患者の訴えを最も重視する患者本位の医療」になかなか行き着けないことを端的に示している好例といえると思います。

 ガガさんの勇気ある公表が、海を越えて、日本におけるこの理不尽な姿勢を改める契機になればいいと思います。 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。北里大学医学部客員教授、日本神経眼科学会理事長などを兼務し、15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ、副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人---心療眼科医が本音で伝える患者学」(春秋社)、「健康は眼に聞け」(同)、「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、医療小説「高津川 日本初の女性眼科医 右田アサ」(青志社)、「茅花流しの診療所」(同)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半には講演・執筆活動のほか、NPO法人などのボランティア活動に取り組む。

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