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介護・シニア

負担増す民生委員に助っ人

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協力員、高齢者宅訪問や現況把握

 

負担増す民生委員に助っ人

サロンの昼食時にお年寄りや協力委員と笑顔で話す民生委員の飯田さん(中央)。「ひ孫さんはおいくつになったの?」「食べ過ぎたらいかんよ」などと温かい会話が続いた(兵庫県伊丹市で)

 「活動が大変そう」などのイメージで「なり手」の確保が全国的な課題となっている民生委員。一部の自治体では“助っ人”としてボランティアの協力員(協力委員)制度を設け、民生委員の負担軽減と、新たな「地域福祉の担い手」の発掘につなげている。

  ■1人につき2人

 「このお料理、おいしい。来るのがいつも楽しみよ」。兵庫県伊丹市の集会所で月2回開かれる地域サロン「さくら会」。サケの野菜あんかけを食べた80歳代の女性の言葉に、同市の民生委員飯田 原子もとこ さん(68)は「みんなでしゃべって、笑いながら食べるのが一番ね」と笑顔で応じた。

 サロンは高齢者の見守りなどのため、飯田さんら5人の民生委員を中心に運営されているが、買い出しや昼食の準備などは9人の協力委員の女性たちが担当する。昼食時は全員でお年寄りとテーブルを囲んで会話し、体調や生活ぶりに変化がないか、さり気なく目配りする。

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 兵庫県は「地域をより多くの目で重層的に見守れるように」(社会福祉課)と1990年、地域で活動する民生委員を支えるボランティアとして協力委員を制度化した。民生委員1人につき2人まで配置し、サロン活動への協力や、高齢者宅の訪問、住民の生活状況の把握などを行っている。支援が必要な住民を把握したら速やかに民生委員に伝え、民生委員が対応する。

 伊丹市では民生委員246人と、協力委員415人が活動中。同市地域・高年福祉課の野口晋吾さんは「民生委員も、自宅から離れた地域の状況は把握しにくい。気付いたことを民生委員に伝えるだけでも大きな支えになる」と話す。

 飯田さんも、昨年12月に民生委員になる直前まで15年近く協力委員を務めた。「協力委員をやってきたので顔見知りのお年寄りも多く、スムーズにスタートできた」と話す。

  ■引き継ぎのため

 「担当区域の75歳以上のお年寄りは120人。初めて会う人ばかりで、いきなり一人でやったら大変だった」。千葉市中央区の民生委員、石橋美恵子さん(67)は今年5、6月に実施した高齢者世帯の訪問調査を振り返った。調査は前任の民生委員の木田典子さん(75)と一緒に行った。木田さんは5期15年務めたベテラン。昨年12月、石橋さんに引き継ぐにあたって「慣れるまでは大変だから」と協力員を引き受けた。

 訪問調査では健康状態や家族構成を確認し、一人暮らしなら家族の連絡先も聞く。「『初心者』にはなかなか気を許してもらえない」と石橋さん。会話の糸口を上手に見つける先輩に助けられた。

 千葉市は2014年、「なり手」不足への危機感から、負担軽減と「地域福祉の担い手」の掘り起こしのため協力員制度を創設した。現在、約130人が活動し、民生委員の約1割が支援を受けている計算だ。70歳代が最も多く、木田さんのように引き継ぎのために務める人も目立つ。

 同市地域福祉課の和田明光さんは「高齢者の孤立や孤独死が注目され、民生委員の負担は増している。なり手不足解消のためには、まずは負担軽減が必要だ」と説明する。

経験積んで後継者にも

 

 全国民生委員児童委員連合会によると、協力員や協力委員を置く市区町村は全体の約9%と少ないが、メリットは大きい。

 兵庫県の制度は民生委員の後継者育成が目的ではないが、伊丹市では昨年誕生した新任の民生委員48人のうち、13人が協力委員経験者だった。民生委員の活動を近くで見て、「もっと深く地域に関わってみようと考えてくれる人もいる」(野口さん)という。

 高齢化に加え、近隣住民とのトラブルを抱える世帯など慎重な対応が必要なケースも珍しくはなく、民生委員を引き受ける際の心理的なハードルが高くなっている。民生委員の定数に対する充足率の全国平均は90%台後半と高いが「引き受けてもらうため、『特別なことはしなくていいから』と説得するケースもある」(関係者)との声も多く、なり手確保は綱渡りの状況だ。

 全国社会福祉協議会の池上実・民生部長は「民生委員の活動をサポートする協力員の制度は、見守り活動の頻度を上げられるなど地域のメリットにつながる。地域の実情に合わせ、うまく活用してほしい」と話す。

  <民生委員>  民生委員法で定められた無報酬のボランティアで、児童福祉法が定める児童委員も兼ねる。全国約23万人のうち60歳以上が全体の8割で、女性が6対4の割合で多い。3年ごとの改選時に3分の1近くが入れ替わる状況が続いている。

 (滝沢康弘)

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