すてきオン&オフ
医療・健康・介護のコラム
[サヘル・ローズさん]役になり切り感情解放
イラン・イラク戦争の空襲で家族を失い、4歳からの3年間、イランの首都・テヘランの孤児院で過ごしました。他の子どもたちとの集団生活は、とても寂しく、心細い日々でした。孤児院でボランティアをしていた今の養母が、7歳の私を引き取ってくれたことはとてもうれしかったです。
養母は、「元の親よりも愛する自信があるよ」と言ってくれ、血縁がなくても、心のつながりがあることの大切さを教えてくれました。幼い子どもは、特定の大人に愛されることが大切です。虐待などで親と暮らせない子どもたちの受け皿として、里親家庭などが増えてほしいと思います。
ただ、来日後は、苦労もしました。住む場所をなくし、2週間ほど、養母と公園で寝泊まりしていたことがあります。小学校で給食をつくっている女性が異変に気付き、私たちを自宅に泊めて助けてくれました。
イラン人だからといじめられたことも……。でも今はそうした経験も糧になっていると感じます。
お芝居をしている間は、役になり切ることで感情が解放されるので、私にとっては、“オフ”なんです。今回の舞台は、生と死、夢と現実が混在するテーマ。一人で三役に挑戦します。
心が落ち着くのは、ガーデニングをしている時です。養母と暮らすマンションのベランダなどで100種類のバラを育てています。土に触れながら、自分と向きあう大切な時間です。(聞き手・粂文野、写真・吉岡毅)
イラン出身。女優・タレント。1985年生まれ。9月15~24日、すみだパークスタジオ●(東京都墨田区)で上演される舞台「川を渡る夏」に出演する。
※●は「○の中に倉」
(2017年9月15日 読売新聞夕刊掲載)
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