医療大全
医療大全
【臓器移植法20年】贈る思い(4)遺族に届く「感謝の声」
摘出した臓器が搬送された日は快晴で、空気は澄みきっていた。
最初に心臓がヘリで運び出される。北関東に住む男性(71)は早朝、病院の屋上にいた。脳死ドナー(臓器提供者)となった長男(当時38歳)を見送るために、妻や病院スタッフと一緒だった。
朝焼けが白いヘリを染め、遠くの山々は
「お前すごいな。おやじにはできないことをしてるよ。頑張って来いよ!」
ヘリが飛び立つ瞬間、男性はそう叫んで腕を突き上げ、親指を立てた。
ヘリは別れを惜しむように上空を1周し、遠くの空へ飛んで行った。続いて他の臓器も摘出され、駅などで見送った。
臓器を送り出したときには、長男を失う悲しみと寂しさに、旅立ちを応援する気持ちが加わっていた。
この記事は読者会員限定です。
読売新聞の購読者は、読者会員登録(無料)をしていただくと閲覧できます。
【関連記事】