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心臓の「左心耳」、なくても問題ない…切除手術して脳梗塞を予防

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心臓の「左心耳」、なくても問題ない…切除手術して脳梗塞を予防

 2009~14年に脳梗塞を4回繰り返した兵庫県姫路市の神沢 (いつ) 子さん(72)は、心臓の「 左心耳(さしんじ) 」という部分を切除した。

 左心耳でできた血栓(血の塊)が脳の血管を詰まらせていたためだ。血栓ができる元を絶つ手術で、脳梗塞の不安から解放された。

 左心耳は、左心房から突き出した袋状の器官で、心臓と同様に拡張と収縮を繰り返している。神沢さんの脳梗塞は、不整脈の一種で心臓の上部が震える心房細動により血流がよどみ、血栓が作られたことによるもの。そこで、東京都立多摩総合医療センター(東京都府中市)で手術を受けた。

 心房細動が起きると、左心耳も細かく震え、中の血液がよどんで血栓ができやすくなる。左心耳でできた血栓は、動脈から脳に運ばれ、血管をつまらせる。年約20万人の脳梗塞発症者のうち3割が心房細動が原因とされる。特に左心耳でできた血栓は大きく、重篤になりやすい。

従来治療のデメリット

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 心房細動の治療には、血を固まりにくくする薬や脈拍を遅くする薬を飲む薬物療法がある。ほかに、心臓に細い管を入れ、先端の電極で震えの原因となる異常な電気信号を発する部分を焼き切るカテーテルアブレーションも行われている。

 薬物療法では、一生薬を飲み続けなければならないうえ、血が固まりにくい薬は出血しやすくなる恐れがある。カテーテルアブレーションは、治療後数か月以内に10~50%の確率で再発するとのデータもある。

左心耳を切る・塞ぐ「薬が不要に」

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 このため近年、左心耳を切ったり塞いだりする治療法が取り入れられるようになった。左心耳は、左心房の圧力を逃がすなどの働きがあるが、なくても問題ないことがわかっている。

 心筋梗塞など他の手術のついでに左心耳の入り口を糸で縛ったり、左心耳を切り取ったりすることがある。ただし、そのためだけに胸を切り開いて手術するのは体への負担が大き過ぎる。

 そこで、胸に小さな穴を開けてカメラと手術器具をさし入れ、左心耳の入り口をクリップで閉じたり、切除したりする手術も広がっている。切除手術を受けるまでは、血を固まりにくくする薬を毎日飲んでいたという神沢さんは「薬を飲む必要がなくなり、体調も良くなりました」と喜ぶ。

 さらに体の負担が軽い治療法として注目を集めているのが、細かい編み目状の特殊な器具で左心耳の中から塞ぐ治療法だ。太ももの静脈から先端に畳まれた状態の器具が付いた細い管を入れ、左心耳の入り口で器具を広げて塞ぐ。

 すでに欧米では承認されており、血を固まりにくくする薬の服用との比較では、4年間の脳卒中などの発症率は40%低かった。

 国内でも今年2~7月に10か所の医療機関で、心房細動の患者計60人を対象に臨床試験(治験)が行われた。有効性の分析が進められており、この器具を取り扱う医療機器メーカーは、19年の保険適用を目指している。

 治験にあたった東邦大学医療センター大橋病院循環器内科准教授の原英彦さんは「高齢化社会を背景に、心房細動の患者は増加傾向にあるので、安全で有効な治療法の選択肢が増えるのは望ましいことだ」と話している。(原隆也)

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