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良い睡眠、会社が後押し

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スマホで「見える化」 好循環へ

良い睡眠、会社が後押し

 ◇安心の設計 変わる働き方

 社員の睡眠改善に取り組み始めた企業があります。十分な睡眠で集中力が高まり、仕事を早く終えて帰宅できれば、私生活が充実して翌日以降の活力につながる――。社員一人ひとりのそうした好循環が、会社にとってもプラスになるという発想です。(滝沢康弘)

  ■残業と眠りの関係

 電気機器メーカーのオムロン(本社・京都市)は7月、希望する社員1000人に腕時計型の活動量計「ムーヴバンド3」を無料で配りました。関連会社「ドコモ・ヘルスケア」の市販商品で、睡眠時間や「深い眠り」の割合などを記録できます。利用者はスマートフォンの専用アプリの画面でこれらの情報を確認できます。グローバル人財総務本部で社員の健康や就労環境を担当する岩村加奈子さんは「自分の睡眠を『見える化』できます。睡眠は仕事の集中力と関係が深く、改善に役立ててほしい」と話します。

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「社内で『眠り』について話題に上ることが増えた」と話す岡野さん(右)と稲生さん(京都市のオムロン本社で)

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スマートフォンの専用アプリで、自分の睡眠時間や「深い眠り」の割合などを確認できる

 厚生労働省が2014年にまとめた「健康づくりのための睡眠指針」は、「睡眠不足は結果的に仕事の能率を低下させる」と指摘しています。ただ、15年度の同省委託調査では、フルタイムの正社員で睡眠時間が「足りていない」と答えた人は「どちらかと言えば」も含めて45.6%。理由は「残業時間が長いため」が36.1%で最多でした。長時間の残業で睡眠を十分取れず、翌日の能率が低下してまた残業――。そんな悪循環がうかがえます。

 同社は昨年、残業を原則1日2時間までとし、午後8時以降も働く場合は申請が必要な仕組みに改めました。「早めに帰れば、早めに就寝できます。運動や趣味の時間を持ち、リフレッシュすることも可能です」(岩村さん)。仕事と私生活の両面で望ましい生活サイクルを促し、職場で存分に力を発揮してもらって残業減にもつなげる。睡眠改善の取り組みには、そうした狙いがあります。

  ■プライバシー

 ただ、睡眠についての働きかけは、私生活への干渉と受け止められたり、「睡眠状況を人事に知られたくない」といった反応が出たりすることも考えられます。そこで、同社では対象を希望者に限定するとともに、社員の個別の睡眠データは把握せず、平均値など集計・分析された結果のみを取り扱うとしています。

 一方、データを見て自分で改善に取り組むことになるため、参加社員は保健師による「睡眠セミナー」への出席を必須としました。蓄積した睡眠不足は休日の「寝だめ」で解消できないことや、眠りの質を高める方法を紹介し、必要な場合は保健師に相談するように呼びかけたそうです。

 商品事業本部の岡野祐三さん(40)は「深い眠りが何%かを見るのが毎朝の習慣です。真夏はエアコンを適温でつけたままの方が、高い値が出ることがわかりました」と話します。生産プロセス部の稲生進也さん(35)は「早く寝ようと心がけるようになりました。睡眠の質が高い日は効率的に仕事ができそうな気分になります」と話しています。

  [記者メール]食事・運動も

 同じ人が同じ時間だけ働いても、調子が良い日も悪い日もあって、いつも同じ量や質の仕事ができるわけではないのが普通です。そうした点に注目して、それぞれの社員に持てる力を発揮してもらうには何ができるか、と考えたオムロンの取り組みに興味をひかれました。同社では今回紹介した「眠り」に続き、「食事」「運動」「たばこ」など、社員の健康増進に向けた働きかけを、順次、進めていくことにしています。

 「よく眠れた日は、考える仕事でいいアイデアが出せている気がします」という社員の言葉が印象に残った取材でした。(滝沢)

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