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冬眠状態で潜むウイルス、免疫低下すると暴れ出し…帯状疱疹を発症

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 愛知県の会社役員女性(74)は3月、右ひじ周辺に現れた発疹に気づいた。近くの皮膚科で 帯状疱疹たいじょうほうしん との診断を受け、ウイルスの増殖を防ぐ抗ウイルス薬を服用したが、右の腕や手のひらに生じた、焼けるような痛みに長らく苦しんだ。痛み止めの薬を使い、夏に入りようやく痛みが和らいできた。

 帯状疱疹は子どもに多い水ぼうそう(水痘)と同じウイルスが原因。全身に水ぶくれが出る水ぼうそうは治っても、ウイルスが背骨近くにある「神経節」と呼ばれる神経の集まりに冬眠状態で潜んでいる。ウイルスは、加齢や過労、ストレスで免疫の力が弱ると活発になり、神経節から出て増殖、帯状疱疹を発症させる。(米山粛彦)

年60万人が発症

冬眠状態で潜むウイルス、免疫低下すると暴れ出し…帯状疱疹を発症

 帯状に発疹が出るのは、ウイルスが神経に沿って移動するため。発疹は、腕のほか、背中から胸や腹にかけて、または顔などに現れ、炎症により神経が傷つき、強い痛みが生じる。体の左右のどちらかに現れるのも特徴。痛みは長引くことがある。年60万人が発症するとされ、50歳以降が多いという調査結果がある。

秋には新薬発売

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 治療は抗ウイルス薬の使用が中心。1週間程度服用する。山梨大学病院(山梨県中央市)の皮膚科教授・川村 龍吉たつよし さんは「薬はウイルスに対し増殖を抑えるためのもので、減らす作用はない。ウイルスが少ない早期から治療を始めることで症状を軽くできる」と強調する。ピリピリ、キリキリとした痛みを感じたり、発疹が出たりしたら念のために皮膚科を受診するよう勧める。

 愛知県の女性も抗ウイルス薬を服用していたが、強い痛みがなかなか治まらなかった。川村さんによると、〈1〉発症時の症状が重い〈2〉高齢で発症した――などの場合に後遺症も重くなりやすいという。痛みには、痛み止めの薬を症状や副作用の有無に合わせて使う。

 抗ウイルス薬では、1日1回服用の新しいタイプの薬が今年秋に発売される予定だ。

 従来の薬は、細胞内でウイルスに作用した後、主に腎臓を通って尿として排出される。このため腎臓の働きが悪い患者は薬の量を減らし、併用する痛み止めの薬も腎臓に負担をかけないタイプの薬を選ぶなどの注意が必要だった。新薬は主に肝臓で代謝された後、大腸から排出され腎臓への影響が少ない。川村さんは「痛み止めの薬の選択肢が、広がる可能性がある」と話す。

ワクチンで予防

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 帯状疱疹は発症を予防する方法がある。水ぼうそうのワクチン接種がそれで、国は50歳以上への使用を昨年3月、承認した。ワクチンは、加齢などで弱った免疫力を回復させ、ウイルスの活動を封じ込める。

 愛知医科大学病院(愛知県長久手市)の皮膚科教授・渡辺大輔さんは「中高年はワクチンを接種してほしい。発症を防げば痛みに長く苦しめられることもない。発症しても軽症で済むようになる」と説明する。

 ワクチンは8000~1万円程度かかる。国は原則無料となる定期接種化に向けた議論を始めている。新しい種類のワクチンも開発され、国内企業からの承認申請を受け現在審査中だ。

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