医療ルネサンス 25年
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[医療ルネサンス 25年](2)「恐怖から解放された」…記事読み 胸腔鏡手術で回復
「お父さん、心房細動のことが医療ルネサンスに出てるよ!」
2年前の8月31日朝、リビングでテレビを見ていた埼玉県上尾市の宮林豊さん(71)の元に、妻の 富三子 さん(65)が先に読んだ新聞を持って駆け寄ってきた。これが数年来、豊さんの頭を覆っていた暗雲を追い払うきっかけになった。
悩みの種は、2010年頃から出るようになった心房細動。心臓上部の心房が不規則に震える不整脈の一種で、脳 梗塞 を起こす血栓ができやすくなる。
12年と14年に、脚の付け根の血管からカテーテル(細い管)を心臓内まで通し、心房細動を起こす異常な電気刺激の発生源を熱で焼く「アブレーション」という治療を計3回受けたが、いずれも数か月後に再発した。
それ以来、「もう心房細動を止める治療法はないだろう」とあきらめ、時折、 動悸 を感じては、「いつか脳梗塞になるかもしれない」とおびえ、気が重くなった。血栓をできにくくする薬ワーファリンの服用に伴う食事制限で、好物の納豆が食べられないのもつらかった。
豊さんは富三子さんが渡してくれた記事を読んだ。血栓の大半は、左の心房に耳のような形で付いている「 左心耳 」でできるため、これを胸に4、5か所開けた穴から行う 胸腔鏡 手術で切除。同時に心臓の外側からアブレーションも行うという。新しい治療の試みだが、手術を受けた患者の「服薬が必要なくなり、スポーツを楽しんでいる」という記述に引きつけられた。
すぐに記事に出ていた東京都立多摩総合医療センターのホームページで手術の説明を確認し、心臓血管外科部長の大塚俊哉さんの診察を予約した。治療希望者が多かったので順番を待ち、昨年3月、ようやく治療を受けることができた。
手術時間は1時間半、入院も5日間と短く済んだ。血栓の心配がなくなったうえ、心房細動もすっかり出なくなった。ワーファリンの食事制限も解かれた。
「今は脳梗塞の恐怖から解放され、快調な毎日です」と豊さん。富三子さんも「お父さんが明るくなってほんと良かった」と一緒に笑う。
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