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ES細胞、国内初の治験…肝疾患の乳児に移植へ

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ES細胞、国内初の治験…肝疾患の乳児に移植へ
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 国立成育医療研究センター(東京)の研究チームが今年度、ES細胞(胚性幹細胞)から作った肝細胞を、肝臓の病気の赤ちゃんに移植する医師主導の治験(臨床試験)を国に申請する方針であることが分かった。

 万能細胞の一つであるES細胞を使った国内初の臨床応用となり、2020年頃に再生医療用の肝細胞を製品化することを目指している。

 ES細胞は、不妊治療で使われなかった受精卵の一部の細胞を取り出し、培養して作る。無限に増える特徴を持ち、目的の細胞に変化させて患部に移植し、失った機能を回復させる再生医療に利用できる。

 治験は、生まれつき肝臓で特定の酵素が働かないため、アンモニアが分解されず血中にたまる「高アンモニア血症」の重い赤ちゃんが対象。患者は国内で年間10人程度とみられる。意識障害や呼吸障害が起き、生後3か月以降なら肝臓移植で治療できるが、その前に亡くなるケースがある。

 同センターの梅澤明弘研究所副所長や笠原 群生むれお 臓器移植センター長らは、作製済みのES細胞を正常な肝細胞に変え、生後数週間以内に数千万個を、腹部から血管を通じて肝臓に送る計画だ。ES細胞由来の肝細胞がアンモニアを分解、容体が安定し数か月後の肝臓移植につなげる。治験では、5人の赤ちゃんに実施し、血中のアンモニア濃度が適正に下がるか、肝細胞が肝臓に定着するかなどを調べる。製品化については企業との連携を検討している。

 ES細胞と同様に様々な細胞に変化できるiPS細胞(人工多能性幹細胞)は、人の皮膚や血液などの細胞に特殊な遺伝子を加えて作製する。受精卵を使わずに作れるが、品質にばらつきが出やすく選別が必要になる。海外ではES細胞の治験が多く行われ、成育医療研究センターはES細胞のほうが安心して使えると判断、これまでの研究の経験も踏まえ今回の治験を計画した。倫理面などを審査する同センター内の審査委員会の承認を得た。

 

再生医療iPSと両輪

 

 国立成育医療研究センターの研究チームが治験を始めることで、これまで海外と比べて遅れてきたES細胞の再生医療への応用が大きな一歩を踏み出す。

 人間のES細胞は1998年に初めて作製され、同じ万能細胞のiPS細胞より歴史は長い。だが、国内では受精卵を使うことへの倫理的議論から、医療への応用の動きは鈍かった。

 米英仏韓などでは2010年以降、ES細胞を使い、目の難病や糖尿病の治験が行われている。国内初の治験の計画に対し、小林英司・慶応大学特任教授(臓器再生医学)は「製品化するには費用も課題となる。ES細胞を使っての効果などを分析し、様々な治療法の展開を考えていくことが重要」と話す。

 ES細胞を使った研究の成果は、iPS細胞の研究にも生かせる。両方の細胞を、有効な治療がない患者を救う車の両輪として実用化につなげていくべきだ。(医療部 米山粛彦)

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