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[QOD 生と死を問う]終末期を支える(上)重度でも通所介護

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外出の楽しみ 家族の負担減

 

[QOD 生と死を問う]終末期を支える(上)重度でも通所介護

 超高齢社会を迎え、住み慣れた自宅で最期まで過ごせる環境作りがますます重要になっている。終末期が近づき、医療的なケアが必要でも、高齢者や家族の孤立を防ぎ、家族の負担を軽くするために、デイサービス(通所介護)で状態が重い高齢者を受け入れるなど変化が求められているようだ。

 横浜市金沢区の自宅で寝たきりの男性(84)を8月5日朝、近くのデイサービス「つくしんぼ」の職員2人が迎えに来た。「さあ、行きましょう」。明るく声を掛け、2人で移動させる。体をほとんど動かせない男性は瞳を動かし、妻(85)や職員に笑顔を見せた。

 男性は、尿道にカテーテルを入れており、介護度は最も重い要介護5だ。2015年1月に体調を崩して、ベッドで寝たきりで、医師や看護師の訪問も受ける。

 数少ない外出の機会が週3回のデイサービスだ。本人も介護する妻も楽しみにしている。妻は「家に閉じこもりきりでは本人も参ってしまう。サービスのお陰で家族が買い物や病院にも行ける」と感謝する。

 つくしんぼは、要介護5で寝たきりだったり、医療的な処置が必要だったりする利用者も受け入れる。食堂には介護ベッド2台を備え、看護師が手際よく医療処置を施しながら、他の利用者と同じように、食事やレクリエーションを楽しむことができる。亡くなる直前まで通う人も多い。

 ただ、一般的には重度の介護が必要な高齢者の利用は「対応が難しい」「責任が持てない」などと断る施設が多いのが実情だ。

 東京都町田市の看護師で主任ケアマネジャー、河合朋子さんは、「受け入れてくれる施設は限られており、なかなか見つからない地域もある。その結果、いったんは自宅で生活しても本人も家族も『在宅は無理』と思うことも多い」と指摘する。

 

 厚生労働省のまとめによると、全国に約4万3000か所あるデイサービスの利用者は、軽度者(要介護度2以下)だけで7割以上を占め、要介護3以上は24%にすぎない。デイサービスの担当者は「軽度者しか受け入れていない施設が相当数ある」と指摘する。

 国は、2015年度から、状態の重い高齢者を一定数受け入れる施設などの報酬を増やしたが、受け入れは進んでいない。主な理由は、〈1〉状態の重い人を受け入れると事故などのリスクが高まる〈2〉介護施設の看護師が医療的ケアをしても、介護報酬が簡単に増えるわけではない――ことなどだ。

 

 医療的ケアが必要な高齢者に対応するサービスとしてはほかに、「療養型通所介護」がある。国が2006年4月、一般のデイサービスとは別に設け、訪問看護の経験がある看護師が管理者となり、人員配置も手厚くするなどの基準が定められた。ところが、制度開始から10年たっても、全国に85か所(16年)と広がっていない。

 理由は、経験豊富な看護師らを雇うには報酬が低過ぎることなどが指摘されており、12年には半数近くが赤字という調査もあった。 日本訪問看護財団常務理事の佐藤美穂子さんは「自宅での 看取みと りを増やし、家族の介護離職を防ぐためには、重度者の受け入れを進める必要がある。ただ、少ない介護報酬では看護職員や介護職員を増やせず、経営が成り立たない。来春の(医療・介護の)同時改定では、報酬増の仕組み作りにも踏み込むべきだ」と話した。

  <デイサービス>  高齢者が日帰りで施設に通い、食事や入浴の介助を受けたり、生活に必要な動作の訓練をしたりする施設。自宅に閉じこもり、社会的に孤立するのを防ぎ、介護する家族の負担を軽くするのも目的。ただ、手厚い介護を必要とする人や、人工呼吸器などの医療器具を使いながら在宅で療養する高齢者を受け入れる施設があまり多くないのが課題だ。

「自宅で最期希望」過半数だが

 

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 自宅での介護が重視されているのは、多くの人が自宅での看取りを望んでいることや、「多死時代」を迎えることなどが背景にある。

 内閣府が2012年、55歳以上の約2000人を対象に行った調査では、「自宅で最期を迎えたい」と回答した人は54.6%だったが、実際には、厚労省の調査で75%の人が病院で死亡していた。

 また、亡くなる人は現在の年間約130万人から、40年頃には年間約170万人に急増すると予測され、国は病院以外の自宅や施設などでの看取りを進める。

 現場のケアマネジャーらからは「状態が重くなった時に、自宅を訪問してくれる医師や看護師は見つかりやすくなってきた。しかし、自宅にいても一歩も外に出られず、地域の人と交流もない状態では自宅にいる意味がない」という声が強い。終末期の本人や家族をいかに支えるかが大きな課題だ。

 ◎QOD=Quality of Death(Dying) 「死の質」の意味。

 (大広悠子)

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