科学
科学
難病指定の条件が「人口の0.1%程度に達しないこと」の不可解
脳の神経伝達回路に異常をきたすと、眼球は正常で視力や視野にも仮に異常がないのに、「目を開けよ」という脳の指令が
こういう方々には、一見どこが悪いのかわからない症例から、わずかな光にも過敏に反応して耐え難い目の痛みや
アイマスクや光を通さないゴーグルを常用したり、暗室で過ごさなければならなかったりするような最重症例を、私は外来でこれまで10例以上診察しています。
原因や重症度はさまざまですが、そうした方々の生活上の不都合を考えて、「眼球使用困難症候群」と名付けました。眼球を快適に使用することができないことが共通していたからです。
原因はどうであれ、確立した治療法がないために、医療側としては障害手帳や障害年金の手続き書類を書くくらいしかできることはありません。けれども、視力や視野に障害がある場合しか想定されていない従来の法律では、高い障壁があります。日常生活が厳しい最重症者でも、なかなか福祉の恩恵をこうむりにくい現状は、本コラム 「目がいいのに使えない『眼球使用困難症』の方、患者友の会に集合を!」 でも伝えました。
同時に、同様な症状で苦しんでいる人々の状況を知り、情報を共有するためにも「患者友の会」が必要だとも呼びかけました。それを読んだ患者さんや家族から、これまでに50件近い反応をもらいました。文面から推測すると、そのうち少なくとも10例近くは最重症例に属すると考えられます。
しかし、彼らのほとんどは、詐病、心因性疾患と言われるなど、医師にまともに取り合ってもらえなかった、と書かれていました。
反響のあった患者さんの中には、眼球使用困難症候群の核となる
その人はその折に、ジストニアとして指定難病にならないのかと質問したそうです。
「指定難病はジストニア全体の人数が多いので無理」との回答だったようです。
私は、以前から不思議に思っていることがあります。
指定難病の条件として、発病の機構が明らかでなく、治療法が確立していないことのほかに、「希少な疾患」という記載があることです。さらに規定を読み進めると、「患者数が本邦において人口の0.1%程度に達しないこと」が条件になっています。
なぜ、症例数の多い難病は指定されないのでしょうか。症例数が多ければ、国としても問題はより重大なはずです。
想像されるのは、国家予算に影響するからでしょう。
納税者の多くは、医療や福祉のサービスには市場原理を持ち込まずに、最優先で支出してほしいと思うのではないでしょうか。(若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)
【関連記事】