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【いのちの値段】透析と人生(5)高齢患者 体に大きな負担

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【いのちの値段】透析と人生(5)高齢患者 体に大きな負担

母(写真)が透析を行うべきか迷った日々を振り返る妻の靖子さん。左は杉田さん(新潟県上越市の自宅で)=奥西義和撮影

 日本の人工透析が直面する最大の問題が、患者の高齢化だ。それは、日本の医療全体、そして世界の課題である。透析歴41年の元新潟県立看護大学教授、杉田 おさむ さん(72)夫妻にも、大きく関わるものだった。

 2004年、妻の靖子さん(72)の母(当時84歳)が、新潟市から転居し、同居を始めた。腎機能の低下に加え、認知症がある。杉田さんが通う地元の県立中央病院(上越市)は、母に透析の準備を宣告した。

 母は自分の病状を受け止めることができず、困惑するばかり。判断を娘の靖子さんに委ねた。

 高齢者の透析は、体に大きな負担がかかる。懸念されるトラブルに、母は耐えられるだろうか。透析を終えるたび、「ああ、また透析か。透析のために生きている」と嘆く高齢女性たちの姿が、靖子さんの脳裏に浮かんだ。死ぬまで透析を続けるという母の覚悟なしには到底、踏み切れない。

 悩み抜いた靖子さんは杉田さんに、母を透析室に案内するよう頼んだ。帰宅した母は、「透析のあの機械、おっかない! 私、しなくていい」と言った。

 透析をしないことで母の死を早めるかもしれない。自責の念にかられながら、靖子さんは苦渋の選択をした。

 幸い母の腎臓は回復し、91歳まで生きた。

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