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麻木久仁子の明日は明日の風が吹く

コラム

がんサバイバーは社会復帰までが闘いになる

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がんに打ち勝った友人を見て考えたこと

がんサバイバーは社会復帰までが闘いになる

ある日の収録前、控室にて

 約3年にわたってがんと闘ってきた友人が社会復帰しました。フルタイムで仕事ができるようになったのです。

 突然のがん宣告、緊急入院、厳しくつらい抗がん剤治療、数度の再発、そしてまた抗がん剤とたいへんな思いをしながら頑張っているのを知っていましたから、本当によかった、と私も心から喜んでいます。

 友人のがんは悪性リンパ腫でした。私は病名も知りませんでしたが、白血病、多発性骨髄種などと並ぶ血液がんのひとつです。全身を流れる血液のがんですから、手術はできません。放射線治療などが補助的に行われることもありますが、主に抗がん剤での治療になります。免疫力の低下で無菌室に入院することもあります。

 早期発見が難しいため、ステージが進んでから発見されることが多いようですが、近年、有効な抗がん剤が開発されるなど、治療法の進歩もめざましく、しっかりと治療して社会復帰する患者さんも増えてきたそうです。

 昔は、映画やドラマに白血病の登場人物が出てきたら、「不治の病」として扱われがちでしたが、今はそんなことはありません。多くの患者さんが社会復帰を目指して闘っています。

 病を乗り越えた友人が職場復帰していく過程で、「がんと仕事」という問題の大切さ、重要性を私も改めて思い知ることになりました。2016年に改正がん対策基本法が成立し、患者の就労支援の強化が盛り込まれたことで、社会全体の「がん患者と就労」への関心も高まってきました。

「もしも自分ががんになったら」と想定しておくこと

 がんの治療にどれだけの時間がかかり、いつ仕事に戻れるかは、患者によって大きく異なります。同じ手術を受けても、同じ薬を使っても、回復までの過程は人によって違います。抗がん剤や放射線の治療に長い入院を必要とする患者もいれば、通院で出来る人もいます。

 治療の過程や効果だけでなく、仕事も患者によって違うため、標準的な職場復帰の目安はありません。私の友人も「治った!」と思ったら再発し、仕事への復帰が振り出しに戻ってしまったことがあります。

 2人に1人ががんになる時代で、医学の進歩で治癒・寛解する人も増えているのですから、どの職場にもがんサバイバーがいて当たり前の時代です。すべての患者が仕事への復帰を目指せる社会に向けて、制度をどのように整えていくかの議論はまだまだこれからです。

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国立がん研究センター中央病院には、がんと仕事についての冊子やパンフレットなどがいろいろと置いてあり、さまざまな相談窓口についての情報も充実しつつありました

 一方、私たち一人一人が「もしも、がんになったら」と想定し、職場復帰、社会復帰への道をシミュレーションしておくことも有効ではないでしょうか。職場の就業規則や制度、傷病手当、それに高額医療費制度や障害年金などの公的制度などの確認も大切です。

 がんとの闘いは、治療を終えて社会復帰するまで続きます。

 患者はがんの告知を受けると、まずは治すことで頭がいっぱいになり、治した後の生活は後回しにしてしまいがちです。治療法についての情報はテレビなどで多く目にしますが、社会復帰に向けた情報はあまり取り上げられません。

 その上、職場に迷惑をかけないようにと、早々に退職してしまう人も多いそうです。

「ちょっと待って! 慌てないで!」と申し上げたい。そして、慌てないためにも情報を集めてもらいたい。

 最近では、治療中や治療後の仕事についての相談センターを設ける医療機関も増えてきたようです。自分のためだけではなく、職場の同僚のためにも、「がんと仕事」についての関心が高まってほしいと思います。(麻木久仁子 タレント)

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asagi

麻木久仁子(あさぎ・くにこ)
 1962年、東京都生まれ。学習院大学法学部中退。テレビ、ラジオ番組で司会者、コメンテーターとして活躍するほか、読書家としても知られ、本の紹介サイトHONZや新聞で書評を書いている。2010年に脳梗塞を発症。12年には両胸に発症した初期の乳がんの手術を受け、現在もホルモン療法中。講演会や取材などで闘病体験や検診の大切さを伝えている。2016年には国際薬膳師の資格を取得した。

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