宋美玄のママライフ実況中継
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どうすれば子供のけがは防げるの?
皆さん、お盆休みはいかがお過ごしでしたか。
私は暦通りの勤務でしたが、都内は道路も電車もすいていて、通勤電車でも座れたのにはびっくりしました。保育園も休みのため、実家の母に、2人の子供の面倒を見てもらっています。子供たちはというと、天気がすっきりしない日が続いたので家の中でパワーを持て余していたようです。
1歳8か月の息子が、かなり動き回るようになりました。どうやらイヤイヤ期に入ったらしく、機嫌を損ねたり、何かを主張して言うことをきかなくなったりすることが激増してきました。5歳の娘もそのくらいの月齢だった頃は我が強くて、絶えず動き回っていました。幸い、運動神経が良いのか、ベッドや机によじ登っても落ちることはありませんでしたし、何かを誤飲することもありませんでした。
ところが、息子は、娘より頭が大きめのためか、重心が不安定でよく転びます。しかも、すぐにテーブルに上がりたがり、その結果、時々落下します。そうならないように、イスを離して簡単にテーブルに上がれないようにしてありますが、思い通りにならないといつまでも激しく泣いて大変です。
先日などは、口に物をくわえたまま転んで、歯が抜けてしまいました。対応の仕方がわからずにこれにはあわてましたが、かかりつけの歯科医に行くと、抜けた歯を元の場所に差し込んで固定してくれました。あとでわかったことですが、こんな場合は抜けた歯を牛乳か生理食塩水に浸して、すぐに歯科で入れ直してもらうのがよいそうです。
最大限に注意をしているのに……
先日、私の実家に行った時の息子は、階段を自力で下りることにこだわって手をつなぐことを拒否しました。転げ落ちたときのためにと、すぐ近くで受け止める姿勢で構えていたのですが、あっさり転んで、踊り場に倒れてしまいました。幸いにも、泣くだけですみましたが、どんなに大人が注意深く見張っていても、けがは完全には防げないのだと痛感しています。
少しでもけがを避けるため、角のあるものはなるべく家の中には置かないようにしたり、動かせないものは緩衝材でカバーしたりしています。のみ込んでしまいそうな小さなものや、首に巻きつけてしまいかねないひも状のものは遠ざけたり、落ちたときに溺れないようにお風呂を常に空っぽにしておいたり、と極力、対策はしているつもりです。それでも、眠気に勝てなくて、いつの間にか壁に激突して唇から血を流したりしています。
振り返ると、私自身、小さな頃はけがが絶えなかったそうです。ぬいぐるみに乗って飛び跳ね、タンスの角にぶつかって額を切ったり、目をつぶって歩いて溝に落ちて顔にけがをしたり……どちらも病院で縫合してもらったそうです。車にはねられて入院したこともあります。そんな私に似たのか、子供たちも動きに落ち着きがないので、心配は尽きません。
小児科医の森戸やすみ先生監修の「祖父母手帳」(日本文芸社刊)などを参考に勉強しつつ、精いっぱいできる対策をしていきたいと思います。(宋美玄 産婦人科医)
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怪我と失敗の向こうにある成長や根気
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家のかたすみから出てきた、アントニオ猪木(某スポーツ選手)の本を再読しました。
ハングリー精神や世襲とスポーツ選手は親和性が高いですが、アントニオ猪木は実はもともとボンボンなんだということは知られていません。
(そのあとは凄く失敗や苦労を重ねた)
挑戦や歩みを止めたときに人は年老いていく。
言い換えれば、挑戦や歩みこそ若さの特権であり、本能なのかもしれません。
特に、女親は自分の分身であるゆえに、子供の致命的なダメージや死を嫌いますでですが、一方で、そのリスクにさらされたものこそが本当の強さでもあります。
しかし、それは肉体的死亡や社会的死亡のリスクもあるので難しいものです。
怪我と失敗の向こうにある成長や根気を見てあげてください。
自分に子供ができて、過保護になったら、ごめんなさい。
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痛みや理不尽、危険をどう扱い向き合うか?
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とある学校のスポーツ部活の顧問の先生に聞かれました。
「負けチームは丸刈り=ゲーム性の中での丸坊主はありやなしや?」
神経質な親御さんやファッションポリシーの強いお子さんの心にはどう映るかわかりません。
僕は丸刈りという形ではなくても、何らかの痛みやマイナスを飲み込ませる理不尽の経験はいいんじゃないかと思います。
理由は簡単で、大人の社会の方がむしろ原始的なルールで動いていることも少なくないからです。
(外科系はもろに体育会系ですね)
日本は法治国家のはずですから、歴史的経緯やルールの表裏を知り、大人の社会で生きていくとはどういうことかを考えさせる話にもなります。
最近、「東大生カップルは初デートで安田講堂に立てこもって、絆を深める」という虚構を思いつきました。
良い悪いは別として、あの事件の前提条件や結果、その時の人々が現代の政治経済に大きくかかわってますし、徴兵制や日米安全保障条約などとの関わりも深いです。
だけど、いきなり、「安田講堂事件を知っていますか?」「徴兵制ってどう?」となると、恐怖や暴力を連想させる話になってしまうので、より多くの若者に最初に触れる話としては重いと思います。
包丁なんかがそうですが、危険の質や扱い方がわからないうちに触れたり、近づいたりすると危ないですが、誰もその危険を扱わないで生活することはできません。
それをどうやって、感じて、知っていくのか、プロセスを考えていく必要があります。
自分の習得の速かった人ほど、教えたり、待てなかったりするものですが、そのこととの向き合い方も含めて、親子関係ですね。
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生存のプログラムと痛みの経験の意味
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エビデンスのかけらもない弁で申し訳ないですが、トライアンドエラー=破壊と創造は我々の生存プログラムに組み込まれているのではないでしょうか? (本...
エビデンスのかけらもない弁で申し訳ないですが、トライアンドエラー=破壊と創造は我々の生存プログラムに組み込まれているのではないでしょうか?
(本症例では、親や姉に構ってほしくて動いている可能性も否定できない。)
女性の方が男性よりも自然には長生きする理由が月経による代謝亢進という俗説を聞いたことがありますが、これも通じるものがあります。
(程度にもよりますが、)虐待で一番ひどいのは言葉の暴力・虐待だと言われます。
感情と現実の傷が乖離するからあとあとに残るからではないかと思います。
危険を取り除くほどに、危険(チャレンジ)に向かわせる本能があるのかもしれません。
親になったことないので、説得力もないですが、ちょっと怪我して泣きわめくほうが子供として生理的だと思います。
心や体の痛みを感じながら子供は成長していくものなので。
現代社会は昔に比べて、小さな危険が取り除かれすぎているという問題があります。
過度のいじめや虐待、スパルタ教育を支持する気などかけらもありませんが、痛みという実感を伴う経験が与えてくれる意味というのは大きいと思います。
大人になったら泣きたくても泣けないこともあるので、子供のうちによく泣いておく方がいいです。
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