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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

コラム

レーシック難民が悩む「眼痛」「ドライアイ」、心療眼科の出番か

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レーシック難民が悩む「眼痛」「ドライアイ」、心療眼科の出番か

 「第11回 心療眼科研究会」の特別講演では、武蔵野中央病院院長の牧野英一郎氏が「心のケアは体とアートに包んで」という題で特別講演をしました。牧野氏は、医学部卒業後、芸大音楽学部にも学んだ精神科医としては異色の経歴を持ち、バイオリンを弾きながらの講演でした。このスタイルで、病院内だけでなく、被災地などにも出かけて「アートで心を包む」活動を続けています。

          ◇

 今回は、「レーシック難民」を取り上げます。

 レーシックとは角膜をコンピューターの計算通りに削って、屈折状態を変更する手術のことです。日常生活での眼鏡やコンタクトレンズでの矯正が不要になる利点があり、近視の強い人が手術を受けるケースが大半です。

 レーシックの術後不適応に悩む人を意味する「レーシック難民」という言葉は、むろん医学用語ではなく、いわゆるネット用語です。ここで、2010年に銀座で起きた、集団術後感染をまず思い起こされる方もおられるでしょう。

 これは不適切な手術及び術後管理が原因の例外的事件ですが、これを契機に世界の 趨勢(すうせい) とは異なり、日本のレーシック手術数は減少の一途を 辿(たど) っています。

 吉野健一氏(吉野眼科クリニック)は自身が手術を行った1241例を対象にして、「屈折矯正手術と心療眼科」と題した発表を行いました。

 対象の約95%は「この手術を他人にも推奨したい」と思うほど、高い満足度があったのですが、問題は残りの5%です。

 不満足因子のトップ3は、「過矯正」「眼痛」「ドライアイ」ということでした。

 手術は通常強い近視を、ごく弱い近視か、正視(近視でも遠視でもないゼロの状態)にすることが目的ですが、結果として目標より遠視側に傾いた場合を過矯正といいます。この場合、遠方はよく見えますが、近方にピントが合いにくくなります。

 強度近視の方々は、遠方視は不都合でも、近くは、見る対象物を適切な距離に置けば、眼鏡なしにピントが合うので、そのメリットを享受する日常生活を知らず知らずに送っています。屈折矯正手術を受けると、ものを見る条件や環境に変化が生じ、とくに過矯正になると先述のメリットが失われます。

 術後不適応は、白内障手術をはじめ、ほかの眼科手術後にも出現しうるものであり、決してレーシックだけの特別な問題ではないと考えられます。

 過矯正は白内障手術でも問題視されることはありますが、他の「眼痛」「ドライアイ」をどう考えればよいのでしょうか。

 ここは、おそらく心療眼科の出番です。

 不適応になりうる潜在因子や異常が術前から存在していて、それが手術、つまり視覚環境の大きな変化というイベントを契機に表面化し、その結果、眼痛や乾燥感が出てきたという観点で検討すると、不満足の原因に近づき、場合によって治療や、より広い視点に立った対応法を提案できるかもしれないからです。(若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。北里大学医学部客員教授、日本神経眼科学会理事長などを兼務し、15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ、副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人---心療眼科医が本音で伝える患者学」(春秋社)、「健康は眼に聞け」(同)、「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、医療小説「高津川 日本初の女性眼科医 右田アサ」(青志社)、「茅花流しの診療所」(同)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半には講演・執筆活動のほか、NPO法人などのボランティア活動に取り組む。

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