文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

ニュース

ニュース・解説

遺伝性がん国内初の治療薬、来年にも承認…「卵巣」対象

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
遺伝性がん国内初の治療薬、来年にも承認…「卵巣」対象

 英製薬大手「アストラゼネカ社」の日本法人(本社・大阪市)は、遺伝性卵巣がんの治療薬を国の審査機関に承認申請したことを明らかにした。

 親から受け継いだ遺伝子が原因で発症する「遺伝性がん」の薬の申請は国内では初めて。患者にとって治療の選択肢が広がる一方、家族の発症リスクも分かる可能性があるため、関係学会は家族のケアを含めた適切な診療体制の検討を始めた。

 治療薬は「オラパリブ」(一般名)。「BRCA1」「BRCA2」という遺伝子に変異がある遺伝性卵巣がんの再発患者が対象の飲み薬で、欧米では2014年末に承認された。同社によると、国内の申請は7月末までに出された。早ければ来年前半にも承認される可能性が高いという。

 がん細胞のみを標的にするため、従来の抗がん剤より副作用が少ないとされる。日本の患者も参加して13年から同社が行った国際共同臨床試験(治験)では、再発患者のうちオラパリブを服用したグループ(196人)は、がんが大きくならなかった期間が平均19・1か月。服用しなかったグループ(99人)より4倍近く長く、目立った副作用も確認されなかった。

 患者は薬の使用前に、投薬対象となるか判定するための遺伝子検査を受ける。結果が陽性なら、患者だけでなく家族も同じ遺伝子変異を持つ可能性が生じる。

 日本婦人科腫瘍学会の青木大輔・副理事長は「婦人科腫瘍専門医への研修を通じ、遺伝を考慮した適切な説明方法を周知し、遺伝カウンセリングの体制の充実を呼びかけていきたい」としている。

          ◇

【遺伝性卵巣がん】  生まれつきBRCA1、2に遺伝子変異がある人が発症する卵巣がん。年に約1万人が新たに患う卵巣がん全体の約10%を占める。悪性度が高く進行も速いのが特徴。遺伝子変異がある人の発症リスクは、変異がない人に比べて最大で40倍高いとされる。遺伝性がん(腫瘍)にはほかに、大腸や子宮など様々な臓器にがんが出る「リンチ症候群」、乳がん、白血病などを発症する「リ・フラウメニ症候群」などがある。

家族にもリスクケア必要

 遺伝性卵巣がんの治療薬「オラパリブ」が国内で使えるようになれば、患者にとっては朗報だ。一方、薬の効き目を調べる検査の結果次第では、家族もがん発症の恐れに直面する。画期的な薬の登場が新たな課題を突きつけることになる。

 がんになるリスクが事前にわかれば、早めの対策につなげられる。米女優のアンジェリーナ・ジョリーさんは、母を卵巣がん、叔母を乳がんで亡くし、自ら検査を受けBRCA1の変異が見つかった。この変異は卵巣がんのほか乳がんの原因にもなるため、乳房と卵巣を予防的に手術で切除し、世界で話題を呼んだ。

 だが、がんの発症確率が高いと知ることのダメージは大きい。手術には重い決断も迫られる。日本医学会は指針で、未発症の家族に、丁寧な「遺伝カウンセリング」を行うことなどを医療現場に求めている。

 そのためには患者を支える「認定遺伝カウンセラー」の役割が重要だが、国内には200人ほどで、3分の1が首都圏に集中。がんに詳しいカウンセラーは少ない。

 オラパリブは、遺伝性の乳がんや前立腺がんにも有効な可能性があり、海外では遺伝性がんに効く別の薬も出ている。患者と家族が適切なフォローを受けられる診療体制の整備を急ぐ必要がある。(大阪科学医療部 佐々木栄)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

ニュースの一覧を見る

最新記事