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医療・健康・介護のコラム

国際スポーツ心理学会で研究発表

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検査を受けた経験より「教育」が影響

 1266人のうち、男子は574人、女子は692人で、ドーピング検査の経験がある人は、全体の3.71%、アンチ・ドーピング教育を受けた経験がある人は、54.42%でした。

 ALPHAの得点を比較をした結果、男女差はなく、ドーピング検査を受けたことがある人とない人の間でも、差は確認されませんでした。一方、アンチ・ドーピング教育の経験の有無で比較した結果、教育を受けた経験のある人は、受けたことのない人と比べて、有意に得点が高いことが分かったのです。

 性別、ドーピング検査経験は、アンチ・ドーピングに関する知識に関連しないが、アンチ・ドーピングの学習経験のある者は、ない者と比べて正確な知識を有することが分かったのです。

 この調査で、競技スポーツに関わる学生に対するアンチ・ドーピング教育の実態がようやく明らかになり、教育の有用性と必要性を支持するデータとなりました。

日本はアンチ・ドーピング教育の国際的なロールモデルになれるか?

 私の研究は、教育がテーマでしたが、海外の研究では、国ごとの背景がアンチ・ドーピングの意識にどう影響するかを分析するような調査が多く見られました。

 国によって、競技の成績に応じて受け取る対価の有無や大きさが違います。このことが、規則違反を犯してでも成績を出したい、というと考えるかどうかにも影響するということを導き出した研究もありました。

 現在、私は日本アンチ・ドーピング機構のアスリート委員として、教育や啓発活動のお手伝いをさせていただいています。アンチ・ドーピング機構は、検査をする機関、というイメージがあるかもしれませんが、日本では、アスリートがロールモデルとなり、アンチ・ドーピング教育活動に力を入れています( http://www.playtruejapan.org/jada-athlete-committee/ )。

 アスリート自身が、アンチ・ドーピング活動を主導し、スポーツの価値を自ら守っていくたくましさを持ち始めているといえます。日本のアスリート委員の活動は、国際的にも注目されており、2020年に東京オリンピックを迎える日本から、国際的なアンチ・ドーピングの流れを作り出すことができるのではと私自身が感じているところです。

 私の研究は、さらに進んでいます。また皆さんと共有させて頂きたいと思います!

 暑い日がまだまだ続きますね……。皆さんこまめに水分補給をして、暑い夏を乗り切りましょうね。

 それでは、また次回のカフェでお会いしましょう!(室伏由佳 アテネ五輪女子ハンマー投げ日本代表)

 <ALPHA事前テストの答え:Q1は d、Q2は d、Q3は c >

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室伏由佳(むろふし・ゆか)

 1977年、静岡県生まれ・愛知県出身。株式会社attainment代表取締役。2004年アテネオリンピック女子ハンマー投げ日本代表。円盤投げ、ハンマー投げ2種目の日本記録保持者(2016年4月現在)。12年9月引退。

 アスリート時代には慢性的な腰痛症などスポーツ障害や婦人科疾患などの疾病と向き合う。06年中京大学体育学研究科博士課程後期満期退学(体育学修士)。スポーツ心理学の分野でスポーツ現場における実践的な介入をテーマに研究。現在、スポーツとアンチ・ドーピング教育についてテーマを広げ、研究活動を継続。現在、上武大学客員教授、朝日大学客員准教授や、聖マリアンナ医科大学スポーツ医学講座、徳島大学医学部、中央大学法学部など、複数の大学において非常勤講師を務める。スポーツと医学のつながり、モチベーション、健康等をテーマに講義や講演活動を行っている。日本陸上競技連盟普及育成部委員、日本アンチ・ドーピング機構アスリート委員、国際陸上競技連盟指導者資格レベルIコーチ資格、JPICA日本ピラティス指導者協会公認指導師。著書に『腰痛完治の最短プロセス~セルフチェックでわかる7つの原因と治し方~』(角川書店/西良浩一・室伏 由佳)。

公式ウェブサイトはこちら

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