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元ちゃんハウスより~がんと生きる医師・西村元一の手紙

医療・健康・介護のコラム

西村詠子さんに聞く(上)自らも「元ちゃんハウス」に支えられ

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「患者力高めて」講演、執筆で訴え

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西村さんの58歳の誕生日を祝い、2人でケーキをカット(2016年9月)

  ――抗がん剤の副作用による味覚障害や、冷や汗、だるさなど、胃を切除したために起きる「ダンピング症候群」――。病気の症状に加え、治療の苦しみも身をもって知った西村さんは、医師と患者の両方の視点を得て分かったことを広く伝えようと、講演や執筆活動を積極的に行うようになった。

 病気になったことは不本意だし、悔しい。生きているうちに何かを残したい、伝えたいと思ったんでしょうね。闘病が始まるとすぐ、メモ書き程度のものですが、文章を書いて知人のジャーナリストに送ったりして、どうやって残したらいいかと相談していました。

 様々な人とのご縁がつながり、たくさんの雑誌や新聞に原稿を寄せることができて、本も出しました。講演を頼まれるようにもなり、抗がん剤治療を続けながらあちこちに出かけました。だんだん体力が落ちてくる中、今年の春まで県外にも遠出していましたし、近くで開かれる小さな講演会には5月の初め頃まで参加していました。

 自分が患者になって初めて分かったことを医療関係者に伝えたいと思ったのはもちろんですが、患者さんたちにも、「医療のことを勉強して、納得のいく治療を受けられるよう、『患者力』を高めてほしい」という思いがありました。

みんなの思いが集まり実現

  ――西村さんは、医療関係者と患者との間の意識のギャップを埋め、病院ではなく生活の中で患者を支援する場の必要性を実感。地元の医療関係者らと結成した「がんとむきあう会」のメンバーとともに、英国で生まれたがん患者支援施設「マギーズ・キャンサー・ケアリング・センター(マギー)」をモデルにした「元ちゃんハウス」を昨年12月、金沢市内に開設した。

 「マギー」との出合いは、7年前に遡ります。がん患者が不安や悩みを打ち明け、安らげる場所として、「金沢にもマギーを」との思いを長年温めてきました。でも、常設の施設を作り、寄付で運営するのは、簡単なことではありません。元気な時は仕事の方が忙しかったですし、病気にならなければ、夢で終わっていたかもしれません。

 がんが見つかってちょうど1年たった時、メンバーが、それまで生きられたお祝いをしてくれたんです。そこに主人の中学、高校の同級生たちがやってきて、「マギーをつくるのに使って」と、カンパで集めたお金が入った預金通帳を手渡してくれました。

 基金を設立し、16年6月には「がんとむきあう会」をNPO法人にして、広く寄付を募る活動を本格的に開始しました。ちょうど地元の医療機器メーカーが本社を移転し、空いたビルを無償で貸してもらうことができました。本当にたくさんの人の思いが集まって、「元ちゃんハウス」が実現したんです。

  ――「元ちゃんハウス」ができると、西村さんは患者として通い、他の患者らとの交流に励まされた。その様子をヨミドクターのコラムにもつづった。

 主人は一人っ子だし、2人の子どもは東京にいるので、同居する家族は私だけ。今の住まいには子どもが大きくなってから引っ越してきたので、これまでは近所づきあいなどもほとんどなかったんです。そういう意味では、私たち夫婦は「家族力」と「地域力」に乏しい現代人の典型といえるかもしれません。

 もしかしたら、私一人で主人の闘病を支えなくてはならなかったかもしれない。そうならずにすんだのは、「元ちゃんハウス」があって、そこに仲間がいたからです。主人が亡くなるぎりぎりまで望み通りの暮らしを送れたのも、「元ちゃんハウス」のおかげです。

西村元一さんインタビュー(上)患者になってわかったことを広く伝えたい

西村元一さんインタビュー(下)金沢マギー、元ちゃん基金…がんが与えてくれた贈り物

がん闘病の医師が奔走…患者が医療者と憩う「元ちゃんハウス」オープン

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西村 元一(にしむら・げんいち)

 金沢赤十字病院副院長、第一外科部長。1983年、金沢大学医学部卒業。同大学病院教授を経て、2008年4月より金沢赤十字病院外科部長、09年副院長に就任。専門は大腸外科。日本外科学会、日本消化器外科学会、日本消化器病学会など複数の学会の専門医・指導医。がんとむきあう会代表。15年3月、肝臓に転移した胃がんが見つかった。闘病前から温めていた「街中にがん患者が医療関係者と交流できる場所を」という願いを実現し、16年12月、金沢市内に「元ちゃんハウス」をオープンした。17年5月死去。がんとむきあう会のウェブサイトはこちら

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