第23回 口腔保健シンポジウム
イベント・フォーラム
[第23回 口腔保健シンポジウム](3)口から糖尿病予防
パネリスト (敬称略)
益崎裕章 琉球大学大学院内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座(第二内科)教授
西村英紀 九州大学大学院歯学研究院副研究院長・教授
渡辺真理 アナウンサー
かむことと寿命
――8020運動は、80歳で歯が20本以上ある人の割合を、国民の「50%以上」にすることを目標に1989年に始まりました。昨年、51・2%と目標を達成したのですが、開始当初の割合はどうでしたか。
西村 わずか7%だったそうです。80歳以上で残っている歯の数は、平均で4、5本でした。
――かむことは健康寿命に大きく影響するそうですが、元気で生活できる健康寿命と、平均寿命の差について教えてください。
益崎 差は縮まれば縮まるほどいい。日本は世界的な長寿国ですが、健康ではない期間は、男性が平均約9年間、女性では約12年間もあります。
――かむことが、健康寿命になぜ影響するのですか。
西村 動物は普通、歯がなくなってかめなくなると死んでしまいます。かんで口から栄養をとることで、栄養分が小腸で吸収される時に、インスリンの分泌を促すホルモンが出ます。インスリンの働きで、血液中の糖分が速やかに細胞に取り込まれる。高齢者は、筋力低下を予防する意味でも、よくかむことです。
夕食 寝る4時間前
――かむことは糖尿病予防でも重要ですね。糖尿病では動物性脂肪の取りすぎに注意を、と言われます。
益崎 動物性脂肪は非常に依存性があります。一度口にすると、脳が(食べずにいられなくなる)病みつき状態になって、度を越すと、肥満や糖尿病へとつながっていきます。
渡辺 動物性脂肪の食品は、大好き。ファストフードはどうしても食べたくなってしまいます。益崎先生は、食生活でどんなことに気を付けていますか。
益崎 まずゆっくり食べること。野菜やスープなどから始め、肉、魚などのたんぱく質を食べ、最後に炭水化物というように、順番を考えます。午後10時頃は最も太りやすいので、夕食の時間を早くして、寝るまでに4時間は空けます。良い腸内細菌のエサになる玄米などを食べるようにしています。朝食抜きは糖尿病や肥満の原因。朝食、昼食、夕食のカロリー比率が3対2対1ぐらいが理想です。
よくかむ 体が喜ぶ
生活習慣見直し
――糖尿病に大きく関わっているという歯周病。歯周病になりやすい人の特徴はありますか。
西村 なりやすいと言うよりも、重症化しやすい人は分かっています。肥満の人や糖尿病の人ですね。タバコもよくない。あとはストレス。糖尿病にも悪いので、相互に作用して悪化していくのではないかと思います。
――歯周病予防はどうしたらいいですか。
西村 歯周病は感染症なので、感染を絶つことが基本です。歯を磨くことも大事ですが、歯周病が重症化しやすい人が抱えているリスクを一つ一つ管理すること。食事、運動などの生活習慣に気を付けることです。歯科チェックは、健康な人は年2回でいいですが、糖尿病などがある人はより頻繁にチェックしましょう。
――生活習慣次第で(健康状態が)よくも悪くもなる。様々な要因が重なって一気に、という印象がありますね。
渡辺 (悪い方にいってしまって)後からよくしようというのは大変な努力が必要だと思います。国の医療費だけでなく、家計や本人の気持ちの上でも不安は大きくなるので、ストレスと折り合いをつけ、おいしいものを食べ、健康な睡眠をとり、適度な運動をする。先生方の指摘は難しい宿題ではないと思います。
無理なく運動を
――会場からの質問です。「どんな運動をしたらいいですか」
益崎 運動は肥満や糖尿病だけでなく、認知症やがんの予防にもいいことがわかってきました。無理のない範囲で散歩したり、エレベーターの代わりに階段を使ったりして日常に運動習慣を取り入れましょう。主治医などと相談しながら、毎日運動する生活を送ることが重要です。
――最後に、まとめのメッセージをお願いします。
益崎 自分の健康に責任をもち、車にナビが付いているのと同様に、健康のナビゲーション(道案内役)を持ちましょう。
西村 昔に比べ少し太った糖尿病患者さんで、重度の歯周病の人に、炎症が最も起きやすい。脂肪を希望に変えて健康寿命に取り組んでください。
渡辺 とても勉強になりました。今日これから始めることが大事だと実感しました。みなさんも健康にお過ごしください。
【参考になるウェブサイト】
◇日本歯科医師会 テーマパーク8020
http://www.jda.or.jp/park/
◇サンスター Mouth&Body PLAZA
http://www.mouth-body.com/
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