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第23回 口腔保健シンポジウム

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[第23回 口腔保健シンポジウム](1)講演 動物性脂肪、麻薬的働き

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 「知って得する健康寿命の話~全身に影響する歯周病! 医科歯科最前線~」をテーマにした、「第23回 口腔こうくう 保健シンポジウム」が7月8日、東京・大手町のよみうり大手町ホールで開かれ、約400人が参加した。1994年に東京で開かれた「世界口腔保健学術大会」を記念し、お口の健康に関する理解を市民に広める恒例の企画。歯周病と糖尿病の関係について専門家が解説したほか、アナウンサーの渡辺真理さんを交えてパネルディスカッションなども行われた。

主催 日本歯科医師会
後援 厚生労働省、8020推進財団、日本歯科医学会、読売新聞社ほか
協賛 サンスター株式会社

琉球大学大学院内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座(第二内科)教授 益崎裕章さん

[第23回 口腔保健シンポジウム](1)講演 動物性脂肪、麻薬的働き

 脂肪を正しく理解することが、肥満と糖尿病の予防に重要です。

 野生動物に肥満はありません。太っていると天敵に発見されやすく、獲物を追いかけられないので生存に不利だからです。

 人類の誕生から今日までを1年のカレンダーに例えると、6月半ばに氷河時代に入り、終わるのは大みそかの朝5時です。エネルギーが足りない、水が足りない、塩が足りない、こういう時代を私たちの先祖は生き抜いてきました。好きな時に好きな物を好きなだけ食べられる時代は1年のうち、わずか3分にすぎません。我々には飢餓に備えてエネルギーを貯蓄する体質が備わっています。

 米国人に比べると日本人は圧倒的にやせている人が多いのですが、糖尿病の有病率はほとんど変わりません。日本人は、小太りの段階から色々な病気が起こりやすい体質です。

 皮下脂肪型肥満と内臓脂肪型肥満で、健康によくないのは内臓脂肪型です。動物性脂肪のとり過ぎや食べ過ぎ、運動不足、加齢、不規則な生活、ストレスが重なると余計な脂が肝臓や筋肉、 膵臓すいぞう などにたまりやすくなります。やがて代謝異常を起こし、血管の機能を悪くして心筋 梗塞こうそく や脳卒中を起こします。

 動物性脂肪をたくさん与えて太らせたネズミの片方をそのままに、もう片方は、1日3回運動させます。えさを食べる量は、どちらが多いか。じっとしている方がたくさん食べます。

 普段から運動している人と運動しない人にごちそうの写真を見せる実験。運動している人は、写真を見せられてもあまり脳が反応しません。運動していない人は脳が敏感に反応して、食欲がかき立てられます。

 2日間絶食したネズミに炭水化物のえさと動物性脂肪のえさを目の前に置きます。低血糖になっているので、普通は炭水化物のえさを食べます。しかし、動物性脂肪で太らせたネズミは、脂肪のえさを食べます。動物性脂肪は脳に麻薬的に働きます。たばこやアルコール、麻薬をネズミから取り上げると非常に短い期間で依存症はとれるのに、動物性脂肪は2週間たっても依存が残ります。

 野生動物は、おなかがすいた時に食べ物を求めて動き回らなければいけません。満腹の時はエネルギーが足りているので、獲物やえさを探し回る必要がありません。少し太ると脳のレベルではもう動かなくていいという信号を送って、さらに太ってしまいます。

 肥満を制御する重要な要因として注目されているのが腸内細菌です。腸内細菌のバランス異常は、肥満や糖尿病、ぜんそくなどのアレルギーの病気、がん、心の病気、薬の効き方などに関わっています。腸内細菌のグループには、太らせる「でぶ菌」とやせさせる「やせ菌」があります。二つの菌のグループの比率で太りやすさが決まると言われています。玄米や根菜、豆類、ナッツ類、緑黄色野菜、食物繊維は善玉の腸内細菌のえさになります。

 ダイエットは食べるという意味。減量という意味ではありません。食は、人を良くすると書きます。体に良い物は積極的にとって健康長寿を実現しましょう。

 ◆ ますざき・ひろあき  1989年京都大学医学部卒業。ハーバード大学医学部留学を経て2009年から現職。肥満症・メタボリックシンドロームの診断法や治療法の開発に取り組む。

【参考になるウェブサイト】

◇日本歯科医師会 テーマパーク8020
http://www.jda.or.jp/park/

◇サンスター Mouth&Body PLAZA
http://www.mouth-body.com/

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