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yomiDr.編集室より

コラム

望み通りの最期 カギ握る救急医療

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Motion Blur Stretcher Gurney Child Patient Hospital Emergency

「家で静かに」と願っていても

 自宅にいる高齢者の容体が悪化し、慌てた家族が119番通報。病院に搬送されて命は取り留めたが、人工呼吸器などの生命維持装置がつけられて、意識はないまま家に戻ることもできない――。

 高齢化が進み、亡くなる人が年々増えていく「多死社会」をテーマにした本紙の連載企画「QOD 生と死を問う」の取材では、こんな話を何度も耳にしました。本人や家族が、延命治療は嫌、最期まで家で……と思っていても、容体が急変すれば気が動転して救急車を呼んでしまうものです。ところが、救急隊や病院の救急医療チームは本来、全力で人の命を助けるのが仕事です。結果、誰が悪いわけでもないのに、人生の締めくくりを本人が望まない形で迎えるということが起きてしまうのです。

在宅医療との連携目指す研究会

 そんな悲劇をなくすための大きな一歩になるかもしれない団体「日本在宅救急研究会」が、旗揚げされました。在宅医と救急医を中心に、看護師やケアマネジャーなど、地域の医療・介護にかかわる幅広い職種が参加。在宅療養中に患者の容体が急変した場合の対応や、救急病院での在宅患者の治療のあり方の研究などを目的に掲げています。まずは、家族ら一般の人も活用できる急変時の緊急度判定マニュアルなどを策定する計画です。

 そもそもは、茨城県で始まった取り組みから生まれた動きです。医療法人いばらき会が運営する県内5か所の診療所と同県那珂市の 小豆畑(あずはた) 病院が連携し、在宅患者の急変時に、自宅から病院への搬送や入退院が円滑に行えるよう、患者の情報を共有する体制を整えました。すると、1年間に搬送されて入院した患者の91%が自宅に戻ることができたそうです。

 同病院院長で救急医の小豆畑丈夫さんは「今後、急増する在宅療養の高齢者を地域で支えるには、救急も加えた体制づくりが不可欠。病院の間では、入院が長くなりがちな高齢者の受け入れを敬遠する声も聞かれるが、実際に連携を進めてみるとそのようなデメリットはなかった」と言います。

 7月22日には、第1回研究会が都内で開催されました。全国各地から約300人が集まり、在宅・救急連携の先進事例などが発表されました。

 登壇した在宅医からは、住み慣れた場所での 看取(みと) りを希望していた人の容体が悪化し、親戚や施設職員が119番通報したため、救急車で運ばれる間に亡くなる問題が提起されました。そういったケースでは、患者をよく知らない搬送先の医師が「死因が不明」と警察に連絡してしまい、遺族が事情聴取を受ける場合があることも報告されました。

 一方、救急側からは、「運ばれてきた在宅患者の情報を知りたいと思っても、夜間などは、在宅医と連絡が取れないことがある」といった声が上がったほか、治療により回復が見込めるにもかかわらず、「延命処置はいりません」と、家族らに治療を拒否されることが増えているなどの指摘がありました。

理解して選べるのが理想

 病状がある程度安定して、家で療養する人のための在宅医療と、けがや急病の人を助けるため、迅速な処置が求められる救急医療。これまでは対極にあるとも考えられていた二つの分野です。まずはお互いの事情を知ることから始まるのでしょうが、自由で熱気あふれる議論に、今後の期待が高まりました。

 人の命は計り知れないもので、ベテランの医師であっても、治療の結果や余命を見通すことは難しいのです。まして専門家ではない家族らが迷うのは当然です。自宅や病院でそれぞれどんな治療が受けられて、その結果、どうなる可能性があるのかということを本人や家族が理解したうえで、選択できるのが理想です。日本の歴史上、最も多くの人が亡くなる時代に、より豊かな最期を迎えられることを願って、研究会の活動に注目していきます。

◎QOD=Quality of Death(Dying)「死の質」の意味。

(ヨミドクター副編集長 飯田祐子)

[QOD 生と死を問う]救急と看取り(1)心肺停止、天寿か救命か

[QOD 生と死を問う]救急と看取り(2)終末期の希望、明確に示す

[QOD 生と死を問う]救急と看取り(3)臨終の間際、特養から119番

[QOD 生と死を問う]救急と看取り(4)住み慣れた地域内へ搬送

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ヨミドクターの編集担当者が、小耳にはさんだ健康や医療の情報をご紹介。お勧めのコラムに込めた思いなどもつづります。

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1件 のコメント

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救急医療に依存する前の準備と医療への理解

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

幸福な死のカギを握るのは、救急医療だけではありません。 日々の幸福と、様々な準備です。 医療は完全ではありませんが、準備の時間と手間が良い結果に...

幸福な死のカギを握るのは、救急医療だけではありません。
日々の幸福と、様々な準備です。

医療は完全ではありませんが、準備の時間と手間が良い結果に向かわせる確率を上げます。

病理漫画で、救急医療の診断の正しさは6割とありました。
(漫画の主人公の弁ですが)
診断が誤っていても、治療の抗生剤の守備範囲の広さや自己治癒能力で回復することを考えれば、半分くらいというのが実際なのかもしれません。

救急担当医が無能なのでしょうか?

そういう場合もあるでしょうが、時間の制限の中で、患者や家族の話を聞き、必要な検査を施設の限界で行い、その結果だけでの判断を患者に短時間で理解させて治療を選ばせるプロセスそのものに無理があります。

かかりつけ医での世間話も結構ですが、家族歴や既往歴、主たる画像診断が済んでいれば、交通外傷や一部の稀な病態や疾患を除き、想定される死因は絞り込むことができます。

交通事故や不慮の事故、自殺の他は、感染症、生活習慣病に伴う脳や心臓を主とした血管病、癌だけで、大半の死因になります

予防的な治療や手術の是非の議論はさておき、時間があるうちに問診と検査と説明が済んでいれば、患者も医者も慌てないで済みますし、選びやすいと思います。
(いざとなったら翻意するとしても)

政治的な話も絡みますが、ある程度健康状態が良ければ、地方の患者さんも大都市で検査しておくという選択肢も持つことができます。

勿論、ACLSなどの救命手技の拡散も大事ですが、0次救急ともいうべき診断業務の重要性の理解は大事です。

医師やナースのドロップアウトが多い理由は、夜間救急業務の半義務化がボトルネックだからです。
多分、日常業務にある程度移せたら、色んな意味で医療者にも患者にもいい方向に回ります。

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