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がんの生活を支える(3)患者の子の給食費支援

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がんの生活を支える(3)患者の子の給食費支援

「給食費を支援してくれる方々がいることがうれしい」と話す坂田さん(徳島県石井町で)

 徳島県石井町の坂田真由美さん(44)は13年前に乳がんの手術を受けた。2年前に再発・転移がわかり、現在は2週間ごとに抗がん剤治療を受けている。

 「坂田商店」代表として「抗がん剤治療を受けている人が安心して食べられるものを」と、栄養価の高い発芽玄米を使ったクッキーをインターネットで販売している。子どもは5歳から中学3年までの2男2女。子育てにも忙しい。

 昨年、地元の乳がん患者会から、同県阿南市のNPO法人「AWA(あわ)がん対策募金」が、県内の小中学生の子を持つがん患者を対象に給食費の支援金を支給していると聞いた。さっそく申請し、4万3000円を受け取った。3人の子の給食費に年約25万円が必要で、「支援金は本当に助かる。子どものためにも頑張って治療を続けたい」と話す。

 小学3年から高校1年の3人の子がいる徳島市の主婦(43)も乳がんで、昨年同額の支援金を得た。治療でパートの仕事をやめた上、毎月2万円近くの医療費がかかる。「子どもにも、給食費支援に感謝しようね、と話しています」

 同募金の理事長は、同県阿南市の機械設計会社社長、 勢井せい 啓介さん(62)。2003年に48歳で大腸がんの手術を受け、肝臓や肺へのがん転移も経験した「がんサバイバー」だ。

 09年、県内のがん患者自助グループ「ガンフレンド」を設立。患者同士で毎月集まって話し合ううち、多くが治療に伴う経済的な問題や、仕事を辞めるなど就労の問題を抱えていると痛感した。企業、自治体に「がん患者の経済的負担を支える仕組みを」と呼びかけ、翌年に同募金を発足させた。

 14年から始まった給食費支援の原資は、自治体などが管理する公共施設に企業が設置する自動販売機から生み出される。収益の一部を企業が同募金に寄付する仕組みとなっている。集まった寄付のうち、14~16年の3年間で計70万円が22人への支援金になった。

 徳島県はがん検診を受ける割合が全国最低レベルだ。同募金のメンバーは闘病体験などを伝え、検診を呼びかける「出前講座」を県内の高校を中心に開く。自治体にとっては、がんが身近な病気で検診が大切であることを県民にPRする機会になる。

 勢井さんは「患者、企業、自治体の協力で、がんの早期発見、患者支援への理解が少しずつ広がってきた」と話し、「徳島でやってきたことは、全国でもできるはず。患者の経済的支援の輪が広がってほしい」と期待する。

  メモ  NPO法人・AWAがん対策募金の連絡先 (電)0884・23・3553

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