いきいき快適生活
介護・シニア
帰省、親への配慮忘れずに
生活リズムの違い、体力的な負担
夏休み中に、久しぶりの里帰りを予定している人も多いだろう。自分や孫の顔を見せることは親を喜ばせるが、一方で負担をかけてしまう場合もある。年齢や体力の衰えに応じた心遣いが必要だ。
高齢者の電話相談に応じるNPO法人関東シニアライフアドバイザー協会の理事長、山下由喜子さんによると、子どもが帰省してきて疲れ果ててしまったという訴えが、夏休み時期を中心に寄せられるという。
孫が勝手にお菓子を食べたり、部屋を散らかして平気だったりといった不満もある。「親が朝型、子ども家族が夜型といったように、生活リズムが違うことも多い。普段のリズムを乱され、知らぬ間に疲れてしまう」と話す。
このため山下さんは、「親が70歳代半ばを過ぎたら、実家に滞在するのは2泊3日程度を目安にして」とアドバイスする。個人差があるので一概には言えないが、親に負担をかけている可能性があることは意識しておく。帰省が長期に及ぶなら、近くに宿をとる手もある。
家事の手伝い方にも気を配りたい。例えば食器の収納場所が違っていて後で入れ直す手間をかけることになったり、家族とはいえ他人が台所に入ること自体にストレスを感じたりする場合もある。「手伝いについては事前に確認しておくこと。エプロンを使いたいのなら持参しましょう」
帰省する時期は早めに相談しておく。最近は高齢になっても趣味に積極的だったり地域活動に熱心に取り組んだりする人は多い。日程はなるべく親の都合を優先して決めるようにしよう。交通手段などにもよるが、到着時間は午後3時前後が無難。早すぎると、掃除や食事の支度などが余裕をもってやりにくくなる可能性がある。
「親だから」という気安さに甘えず気遣いを忘れないことが、双方にとって帰省を楽しいものにしてくれると言えそうだ。
認知症の兆候に気付く機会
帰省は、親の健康状態を知る貴重な機会だ。認知症の兆候に気付くこともある。
慶応大学教授(老年精神医学)の三村
例えば、冷蔵庫の中が賞味期限切れの食品や傷んだ野菜類でいっぱいになっていたり、調味料を使い切る前に同じ種類をどんどん買い足したりしていた場合。認知症による記憶障害や判断力の低下が原因の可能性があるという。
以前は整理整頓されていた部屋が散らかっている、押し入れの中にゴミが押し込んである、服装が季節に合っていない、料理の味付けがおかしくなった、孫の名前が出てこない、といった変化にも注意しておきたい。
認知症やその前段階とされる軽度認知障害は、ともに早期に発見して対策を講ずることが重要だ。しかし認知症が進んでくると人付き合いが減るケースも多く、近所の人が気づくのが遅れることもある。「帰省時にサインを見逃さないことはとても有効。少しでも心配なことがあれば、親のかかりつけ医などに相談してください」と三村さんは話している。
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