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アニサキスによる食中毒…生魚の寄生虫で激痛

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アニサキスによる食中毒…生魚の寄生虫で激痛
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 生のサバやサンマなどの青魚を食べた後に激しい腹痛が起きたら、疑うべき病気がある。寄生虫「アニサキス」の幼虫による食中毒だ。新鮮な魚でも安心できず、火を通したり、中心部まで冷凍させたりするなどの自衛策が必要になる。

  ■みぞおちに異変

 今年2月下旬、海で釣ったサバ、イカ、ブリを刺し身で食べた40歳代男性に数時間後、みぞおち付近の痛みが出た。近所の医療機関を受診し、処方された鎮痛薬を飲んでも改善しない。医師はアニサキス症の疑いがあると判断。荏原病院(東京都大田区)を紹介されて内視鏡検査を受けたところ、アニサキスの幼虫が胃にいた。摘出すると痛みは数日で治まった。

 アニサキスの幼虫は体長2~3センチ、幅1ミリ弱で白色。サバ、サンマ、アジなどの内臓や筋肉に寄生している。幼虫が人間の体内に入ると、胃などの粘膜に潜り込んでアレルギー物質を出し、強い痛みを引き起こす。

 厚生労働省によると、2016年に国内で報告された食中毒1139件のうち、アニサキスが原因だったのは124件で、ノロウイルス(354件)、カンピロバクター(339件)に続き、3番目に多かった。だが国立感染症研究所の推計ではさらに多く、年7000人程度がアニサキスによる食中毒を起こしているとみられる。

 腹痛などの症状が出るのは、生魚を食べて数時間~数日後と幅広い。まれに腸や食道などで見つかる場合もあるが、ほとんどは、胃の痛みから内視鏡で確認した際、胃粘膜に頭の方が潜り込んだ状態で見つかる。

 内視鏡でアニサキスを直接つまみ出せば痛みは治まる。取り出せない場合でもアニサキスは数日で死に、人間の体内で生き続けることはない。痛みは長引いても1週間程度だという。ただ、猛烈なアレルギー反応を引き起こすアナフィラキシーが出る恐れもあり、注意したい。

 魚を食べる機会が多い漁師の発症も多いとみられる。すぐに内視鏡を使える医療体制がない離島などの医療機関では、痛みを抑えるためにステロイド薬や抗炎症薬を使う場合もある。

 荏原病院感染症内科医長の中村ふくみさんは「腹痛で受診した際、食べた物の内容を詳しく報告してもらうと、アニサキスを含めた食中毒の早期診断につながる」と話す。

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  ■加熱や冷凍で予防

 アニサキスによる食中毒の予防には、▽生魚は一度冷凍したものを食べる▽なるべく火を通す▽魚の内臓はすぐに取り除く▽目で確認してアニサキスがいたら除去する――などが必要だ。酢やワサビ、しょうゆをつけてもアニサキスは死なない。厚労省は、60度で1分以上の加熱や、マイナス20度で24時間以上の冷凍を推奨している。

 青魚以外では、夏から秋にかけて食べる機会が増えるサケやマスにも注意したい。感染研寄生動物部第2室前室長の杉山広さんの研究では、一般に販売されている天然もののサケの半数以上にアニサキスがいた。

 杉山さんは「回転ずしなどのサケは輸入ものが大半と考えられ、冷凍など衛生管理されており、アニサキスによる食中毒の危険性は少ない。国内の天然ものほど注意が必要」と指摘する。(石塚人生)

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