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臓器提供、病院体制整わず…移植法20年、低迷するドナー

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臓器提供、病院体制整わず…移植法20年、低迷するドナー

 脳死からの移植を認めた臓器移植法が施行されてから今年で20年を迎える。ドナー(臓器提供者)は今なお、必要とする患者よりはるかに少ない。脳死判定や臓器摘出ができる病院が少ないことも一因とされ、課題の解決に向け、現場の医師らが対策に動き出した地域もある。

 日本臓器移植ネットワークによると、亡くなった人からの臓器提供は昨年1年間で、脳死の64件を含め96件。2010年の法改正で、15歳未満の子どもも含めて、本人の意思表示がなくても家族の承諾で臓器提供できるようになり、増加の兆しはある。だが、15年の人口100万人あたりのドナー数は0.7人で、米国の28.5人、韓国の10人に比べ著しく少ない。

 ドナー数の低迷とは裏腹に、国民の意識は決して低くない。内閣府による13年の調査では、43%の人が「自分が脳死となったら臓器を提供したい」と答えた。進まないのは、脳死判定と臓器摘出ができる体制の整った「提供病院」が限られているためと言われる。

  ■高いハードル

 提供病院となるには、移植にかかわらない医師2人以上で脳死判定をし、子どもなら虐待の可能性を検討する委員会を開く必要があるなど、条件がある。

 大学病院や救命救急センターなど全国約900施設が提供病院になり得るが、必要な体制があるのは約3割。家族が提供を申し出たが病院の都合で実現しなかったケースは13~16年に少なくとも12件あった。

 病院側にも事情がある。東北地方のある病院は、患者の親から申し出があり、初めて脳死臓器提供に踏み切った。患者が運ばれたのは週末で、急きょ医師5人を含む約20人のチームを編成。脳死判定は2回行わなければならず、脳波や呼吸など様々な検査が必要で、多くの時間を割いた。

 脳死を判定した医師は、「一般の診療や手術予定がある平日であれば、患者の診療に影響した。医師やスタッフが少ない地方では、したくてもできない病院もある」と語る。

  ■打開へ連携模索

 現状を打開しようと、愛知県では今年、藤田保健衛生大や名古屋大など臓器提供の経験がある県内37病院と県などが連携し、NPO法人「あいち臓器提供支援プログラム」を設立する。

 慣れない提供病院に脳死判定の経験がある医師を派遣したり、マニュアル作りを支援したりするという。提供病院と移植する病院は、定期的に会合を開き情報を共有する。ドナー家族へのアンケートや、提供に至らなかったケースの検証など、研究も進めていく。

 北海道でも今年4月、移植医療の普及・啓発活動を担ってきた移植医療推進協議会と腎臓バンクを統合し、「北海道移植医療推進財団」が発足した。患者や日本臓器移植ネットワークとの窓口が一つとなり、病院やコーディネーターが情報を共有しやすくなった。地域ごとに支部を作り、臓器提供が多い札幌市の病院と各地の移植病院が連携し、移植医療の定着を目指すという。

 藤田保健衛生大学病院臓器移植科教授の剣持敬さんは「臓器提供に関心がある人は増えてきている。提供の意思を無駄にしないために課題を洗い出し、改善点を探っていく」と話す。

  <日本臓器移植ネットワーク>  ドナーから移植希望者へ臓器をあっせんする国内唯一の組織。専任のコーディネーターが手続きや移植病院への連絡、臓器搬送の調整などを行う。

 (鈴木希)

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