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原記者の「医療・福祉のツボ」

医療・健康・介護のコラム

貧困と生活保護(50) 税金逃れの率は、生活保護の不正率より、はるかに高い

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法人税では、税額の1.4%

 法人税はどうでしょうか。2015事務年度の実地調査は約9万4000件、そのうち約6万9000件で申告漏れや所得隠しが見つかり、漏れていた所得額は8312億円、追徴税額は1592億円(加算税を含む)でした。税逃れ1件あたりの申告漏れ所得額は1204万円、追徴税額は230万円(加算税を含む)でした。

 14年度の法人税の申告は約279万4000件、うち黒字決算で納税を申告したのは約85万5000件、申告所得額は58兆4433億円、申告税額は11兆1694億円でした。

 税逃れの率は、申告法人数の2.5%、黒字申告法人数の8.1%、所得額で1.4%、税額で1.4%(加算税を含む)になります。

 主な分野の税務調査結果は、次の通りです。

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相続税では、税額の3.3%

 相続税も見ましょう。2015事務年度の実地調査は1万1935件、うち9761件で申告漏れなどが見つかり、申告漏れ総額は3004億円、追徴された本税は503億円でした(別に加算税80億円)。税逃れ1件あたりの本税額は515万円です。

 この時の主な調査対象は13年分の相続です。13年の被相続人(死亡者)の総数は約127万人、そのうち相続税申告は5万4421件、課税対象額は11兆6253億円、税額は1兆5367億円でした。税逃れの率は、申告件数の17.9%、課税対象額で2.6%、税額で3.3%です。申告件数で見た税逃れ率が高いのは、無申告のケースから不正が多数、見つかるからです。

消費税は、税額で見て4%強

 個人事業者の消費税について、2015事務年度の調査は8万8073件。うち6万1123件で申告漏れなどが見つかり、追徴した本税は235億円(別に加算税36億円)でした。税逃れ1件あたりの追徴本税は38万円余りでした。うち無申告の事業者への調査は8119件行い、119億円を追徴しました(調査1件あたり147万円)。

 14年分の消費税申告は約113万9000件、5218億円だったので、発見された税逃れの率は、申告事業者数の5.4%、税額で見て4.5%となります。

 法人消費税は、2015事務年度の実地調査が約9万件。うち約5万2000件で申告漏れなどが見つかり、追徴税額は565億円(加算税、地方消費税を含む)。税逃れ1件あたりの追徴税額は108万円余りでした。

 14年分の申告は約183万件、約12兆9762億円だったので、発見された税逃れの率は、申告法人数の2.8%、税額の4.4%になります。

税の申告状況のほうが悪い

 データを見てきてわかるのは、源泉徴収される給与所得などを別にすると、世間一般の税金の申告状況のほうが、生活保護の利用者より、よくないということです。

 日本人は、税金のごまかしに甘いと言われます。納めるべき税金を納めないのと、受け取るべきでない保護費を受け取るのと、どちらが悪いのか。どちらも同じではないでしょうか。

 国税当局は、人員、労力をどこに配分するか、効率を考えて税務調査の対象を決めます。怪しいところ、悪質そうなところ、大口のところに重点を置き、細かいことには目をつむるわけです。

 調査1件あたりの追徴税額が大きい分野は、調査対象を広げれば、もっと徴税できる余地が大きいと考えられます。財政面からも不公正をなくす面からも、そこに力を注ぐ必要があります。

 ただし、税務調査がどれぐらい行われているのか、情報公開は不十分です。国税当局は申告漏れや所得隠しの個別事案を一切公表していません。たとえば政治資金も、私的な用途に使えば課税対象になりますが、国税当局がどこまで調べているのか、さっぱり見えません。そういう問題も含めて、税金の集め方にも、国民はもっと目を光らせる必要があるでしょう。

 生活保護の不正受給の実情や、水面下に多数の不正があるわけでないことについては、「貧困と生活保護(46)生活保護の不正受給率はごくわずか 未然に防げるものが多い」「貧困と生活保護(47)不正受給対策は、過剰にならないように」を参照してください。

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原昌平20140903_300

原昌平(はら・しょうへい)

読売新聞大阪本社編集委員。
1982年、京都大学理学部卒、読売新聞大阪本社に入社。京都支局、社会部、 科学部デスクを経て2010年から編集委員。1996年以降、医療と社会保障を中心に取材。精神保健福祉士。社会福祉学修士。大阪府立大学大学院客員研究員。大阪に生まれ、ずっと関西に住んでいる。好きなものは山歩き、温泉、料理、SFなど。編集した本に「大事典 これでわかる!医療のしくみ」(中公新書ラクレ)など。

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