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原記者の「医療・福祉のツボ」

コラム

貧困と生活保護(50) 税金逃れの率は、生活保護の不正率より、はるかに高い

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 生活保護では、前回説明したように、必要なのに利用できない人が大勢いることが最大の問題です。ところが、そう書くと、いや不正受給こそ問題だという意見が出てきます。不正受給は、特別に大きな問題なのか、筆者はそうは思いません。そこで、別の角度から検討してみましょう。収入や資産を申告するという意味で、性質のいちばん近い税金の申告と比べてみるのです。

 税金の世界では、所得などの申告額が実際より少ない場合を「申告漏れ」、そのうち偽装工作がある場合を「所得隠し」(脱税)と呼びます。ややこしいので、以下の説明では、両方を合わせて「税逃れ」と呼ぶことにします。

 国税庁は、税務調査の結果の集計を毎年、主な税目ごとに発表しています。それらの資料をもとに税逃れの率を計算すると、金額ベースで見た場合、生活保護の不正受給率と比べて数倍から10倍ぐらいあり、法人税、相続税、消費税では1件あたりの追徴税額も大きいのです。

生活保護の不正率は、金額で0.45%

 厚生労働省によると、2015年度に見つかった生活保護の不正受給は、細かなものまで含めて4万3938件、総額約170億円(1件あたり38万円余り)。不正の率は保護世帯数全体の2.7%、保護費総額の0.45%でした。内容的には、偽装工作のない「申告漏れ」レベルのものが大半です。この率や金額の規模をどう見るのか。以下で説明する税逃れの状況と比較してください。

申告所得税の税逃れは、税額で3.5%

 まず、個人の申告所得税です。確定申告が必要な人の給与所得、事業所得、不動産所得、土地建物や株の譲渡所得などが含まれます。源泉徴収される給与所得だけの人の分は入っていません。

 2015事務年度(国税調査の事務年度は7月~翌年6月)の調査は、簡単な問い合わせを含めて65万件。うち39万件余りの申告漏れや所得隠しが見つかり、申告漏れ所得額は8785億円。追徴された本税(本来かかる税金)は949億円、別にペナルティーである加算税が125億円でした。税逃れ1件あたりの申告漏れ所得額は222万円、追徴本税は24万円でした。

 この時期に主な調査対象となった14年分の申告を見ると、納税申告者は612万人、申告所得額は37兆1054億円、申告納税額は2兆7087億円でした。これらに対して、見つかった税逃れの率を計算すると、人数で6.5%、所得金額で2.4%、本税額で3.5%となります(所得申告額には源泉徴収の給与・配当などを含むので、所得金額で見た税逃れ率は実質的にはもっと高い)。

 主な分野の税務調査結果は、次のようになっています。

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原昌平(はら・しょうへい)

読売新聞大阪本社編集委員。
1982年、京都大学理学部卒、読売新聞大阪本社に入社。京都支局、社会部、 科学部デスクを経て2010年から編集委員。1996年以降、医療と社会保障を中心に取材。精神保健福祉士。社会福祉学修士(大阪府立大学大学院)。大阪に生まれ、ずっと関西に住んでいる。好きなものは山歩き、温泉、料理、SFなど。編集した本に「大事典 これでわかる!医療のしくみ」(中公新書ラクレ)など。

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