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時々斜視になる「間欠性外斜視」、重度なら小学校低学年までに手術を

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時々斜視になる「間欠性外斜視」、重度なら小学校低学年までに手術を

 人間は誰しも、両目の位置が視標(見ようとする対象物)に最初から合っているわけではありません。目は、何も見ていない安静時の位置(安静眼位)から、対象物に視線を合わせたときに、はじめて正面に来るのです。

 両眼でものを見る両眼視機能によって、距離感、奥行き感を測定していることは、前回のコラムで説明しました。

 安静眼位が外側にある人は少なくありません。それを必要な時に正面に持ってくることができれば、この人は「外斜位がある」と言います。

 斜位とは、両眼視機能ができている場合。これに対し、「斜視」とは両眼視ができない状態です。

 斜視の中で最も頻度が多いとされるのは、時々斜視になるという意味の間欠性外斜視です。

 元気なときは両眼を対象物のところに持ってくることができますが、疲れていたり眠かったりする時などに斜位を保てなくなり、斜視になってしまうのです。

 私は、小学校とこども園の学校医を長年しています。毎年定期的に行う学校での検診で、最も重視しているのが斜視や斜位の状態です。この年齢が、視力や両眼視が発達する最も大事な時期で、ここで見逃すと治療が難しくなるからです。

 間欠性外斜視は、時々しか生じない斜視ですから、検診のときに現れるとは限りません。むしろ、検診のときは皆緊張していますから、見つけにくいのです。

 そこで、安静眼位を参考にします。

 どうするかというと、まず正面にペンライトや視標を出して、片目を隠します。隠せば、その目は対象が見えないので、「安静」の位置に移動します。今度は素早くもう片方の目を隠します。すると、はじめに隠されて安静の位置にあった目は、視標を見るために正面を向きます、その動きの大小を確認して、「隠れ斜視」を見つけ出すわけです。

 間欠性外斜視を見つけたら、どうするのでしょうか。

 両眼視の訓練、手術、経過観察など選択肢はいろいろですが、どういう場合にどうするかという明確なガイドラインは、国際的にもありません。多数例で一生の行方をみなければ結論が出ないため、研究の成立が困難なのです。

 そういうわけで、治療方針は医師の経験、裁量に委ねられることになり、医師によって対応が変わる可能性があります。

 私は、間欠性でも斜視の角度が大きいもの、日常生活で親や周囲の人が見ていて目のずれに気づく頻度が高いものでは、積極的に、小学校低学年までに手術をすることを勧めています。

 成人になって眼精疲労がひどく、仕事にならない人の原因がそこにあった例を少なからず経験していることや、子供の脳の方が、目の位置ずれを修正する機能が高いことが、この方針をとる根拠になっています。(若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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