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医療部発

医療・健康・介護のコラム

機器を使い回さない歯科を探すには

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医療部 渡辺理雄

 「ハンドピースの使い回し」の記事を初めに書いたのは、2014年5月でした。「よくぞ書いてくれた」という声が、院内感染対策を講じている歯科医から上がる一方、やはり歯科医または歯科関係者と思われる方から、「誰に書かされたのか」「院内感染対策の費用がかさんで、保険で歯科治療を提供できなくなる」などの意見も寄せられました。

 今回の記事を出した後も、同じような反応です。「歯科ばかりを糾弾するのは何の意図か。飲食業界の食器、フォーク、スプーンも同じ問題では」「あなたは死ぬまで100%健康保険を使わない歯科医院に行けばいい」など。

 上のような意見を持っている歯科医がいるクリニックには、なるべく行かないことです。

 では、手袋や歯を削る医療機器(ハンドピース)の使い回しをせず、患者ごとに交換している歯科医院を探すにはどうすればいいでしょうか。

 歯科医師に、面と向かって「ハンドピース換えていますか」とは、聞きにくいと思います。長年診てもらっている歯科医に対しては、なおさら気が引けます。

 実は、もっとスマートに、歯科医院の院内感染に対する姿勢がわかる方法があるのです。しかも待合室を見渡すだけでOKです。

 「歯科外来診療環境体制加算(外来環)の施設基準を満たしている」旨の掲示がないか探してみてください。これは、院内感染対策や医療安全対策の体制を整えたとして、厚生労働省の出先機関である地方厚生局に届け出ていることを意味します。

 この外来環を掲げている歯科は、(1)ハンドピースなどを患者ごとに交換(2)専用の洗浄・滅菌装置の使用(3)常勤の歯科医が院内感染対策に関する研修を受講――などの点で院内感染対策をしています、と公に届け出ていることになるので、情報として参考にできます。全国で1万5000以上の歯科医療機関が外来環を取っています。

 かかりつけの歯科医院で外来環の院内掲示がない場合は、近くで外来環を取っている歯科がないか探してみましょう。歯科医院のホームページには、この外来環をアピールポイントにするクリニックも増えています。

 特定NPO法人の歯科医療情報推進機構(iDi)のホームページでは、外来環を取っている歯科医院を地図上で検索できます。iDi会員となっている歯科医院だけなので、200程度ですが、これも近くにないか見てください。

 歯科医療情報推進機構( http://www.identali.or.jp/

 さて、最後の手段は、少しハードルが高く聞こえるかもしれませんが、厚生局のホームページで探すことです。

 まず、お住まいの地方厚生局の都道府県事務所のホームページにアクセスしてください。「地方厚生局 東京事務所」などのキーワードで検索すれば出てきます。所管法人等のコーナーに「保険医療機関・保険薬局の施設基準の届出受理状況及び保険外併用療養費医療機関一覧」という表示があります。

 ここをクリックすると、「施設基準の届出状況」というところに行きます。ここで見たい都道府県の「歯科」をクリックすると、自動的に歯科医療機関の一覧のPDFファイルが開きます。このファイルの「受理番号」の列のところに、(外来環)の表記がある施設は、取得済みの歯科医院です。

 外来環を取っている歯科医院は絶対信頼できるか、と聞かれれば、100%そうではないでしょう。しかし今のところは、公的な情報は外来環だけといってもいい状況です。外来環について歯科医に尋ねる患者が多くなれば、今は院内感染の意識が高くない歯科医院も変わっていくのでは、と思います。

渡辺理雄

 渡辺理雄(わたなべ・みちお)

 2008年12月から医療部。脳卒中、リハビリテーション医療などを取材している。

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医療部発12最終300-300

読売新聞東京本社編集局 医療部

1997年に、医療分野を専門に取材する部署としてスタート。2013年4月に部の名称が「医療情報部」から「医療部」に変りました。長期連載「医療ルネサンス」の反響などについて、医療部の記者が交替で執筆します。

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13件 のコメント

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外来環やISOを取得だけでは違和感

正義感

私は滅菌システムが見えない医院には怖くて行けません。 退職した所は、コロナ下の今はわかりませんが、何件もの勤めていた医院では、外来環やISOも実...

私は滅菌システムが見えない医院には怖くて行けません。
退職した所は、コロナ下の今はわかりませんが、何件もの勤めていた医院では、外来環やISOも実物取得しアピールしていながら、タービン、グローブ等の使い回しは当たり前、ひどい所は破れたグローブすら、簡単には捨てることもさせてもらえず掃除用に回せと。
おまけに飛沫(ひまつ)だらけのマスクを、一週間は使え、と恐ろしいことを平気で従業員に強要する医院もありました。
歯ブラシを使い回している所もあります。
きちんとしている医院は、滅菌システムをホームページ上にあげたりしています。
かなりまれですが、ホームページには上げていなくても、滅菌担当スタッフがしっかりしている医院はありました。
ハンドピースは、ガス滅菌や専用の高価な機器を使い中の構造までしっかり洗浄、滅菌しています。クラスBの世界基準の滅菌機器を取りそろえていたり、あらゆる対策に力を入れていました。
経費はかなり重くのしかかることですが、命の尊厳を考えれば正解は分かると思います。

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通りすがりの者

こういう記事は大変有益です。 業界団体からは嫌がられると思いますが、患者が聞きにくい疑問を取材して、望ましい医療機関の見分け方、探し方を具体的に...

こういう記事は大変有益です。
業界団体からは嫌がられると思いますが、患者が聞きにくい疑問を取材して、望ましい医療機関の見分け方、探し方を具体的に書かれてあるのが良いと思います。ただ、足を使って個別に20件ほどの歯科医院を取材してみた感触などがあればなお良いと思います。
もっとこのテーマを深めて取材、考察し、広く知らせて頂きたいです。

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外来環が目安?

ごんた

まぁ、目安にはなるかもしれないが・・・。 私の所は外来環は取っていないが30年来滅菌可能なものは滅菌しています。 タービンの使い回しなどが減らな...

まぁ、目安にはなるかもしれないが・・・。 私の所は外来環は取っていないが30年来滅菌可能なものは滅菌しています。 タービンの使い回しなどが減らないのは、基本料金である再診料が低すぎて、患者さんごとのグローブ、マスクの交換、全ての器材の滅菌処理を行うのは再診料だけで行うことはできません。 発信力のある記事ですので、そのあたりの問題点も追及して頂きたいと思います。 この記事だけでは「外来環」を掲示していない歯科医院は、タービンを使い回ししていると誘導する事にもなりかねないです。 なぜ使い回しが減らないのかまで掘り下げていただきたいものです。 不安な方は直接歯科医に尋ねられたら良いと思います。

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