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神戸の無痛分娩、遺族が要望書で心境

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 相次いで発覚している無痛 分娩ぶんべん を巡る母子の重大事故。神戸市西区の産婦人科診療所で2015年9月、無痛分娩の麻酔後に急変し、脳に重い障害を負って寝たきりとなり今年5月に死亡した女性の夫が厚生労働相や日本産科婦人科学会など関連学会のトップあてに提出した要望書には、再発防止への願いとともに、亡くなった妻や、今も意識不明で寝たきりの我が子に対する思いが書き添えられていた。

 要望や遺族の心境などに関する内容は以下の通り(要望書より抜粋)。

要望
 私の妻に起きた医療事故が今後起きないように、この医療事故と無痛分娩が原因と疑われる医療事故、ヒヤリハットがどれくらい起きているのか、をきちんと調べて公表してくださるようお願いいたします。そして、もしその原因が、今の医療体制にあるのであれば、医療体制の充実をはかってほしいと思いますし、産科医が外来の片手間に無痛分娩(硬膜外麻酔)を行うようなことが絶対にないようにしていただきたく、お願いいたします。

神戸市西区のクリニックでおきた医療事故

(中略)

 2015年9月2日、無痛分娩の硬膜外麻酔によって、妻は重大な後遺障害を負い、意識を取り戻すことなく、2017年5月12日に亡くなりました。緊急帝王切開で生まれた子どもも、脳に大変重い障害を負い、現在も意識のないまま入院生活をおくっています。

 私たち夫婦にとっては初めての子で、妊娠がわかってからの毎日は幸せでいっぱいでした。子どもが生まれてからの日々を想像し、二人で 沢山たくさん の夢を語り合ってきました。家族や友人と一緒に旅行に行こう、年の近い めいおい と子どもを連れてショッピングに行こう、お互いの両親の家に子どもを連れて遊びに行こうといった、ごく平凡ではありますが幸せな家族の姿を思い描き、語り合ってきましたが、全てが今回の事故により失われてしまいました。

(中略)

 院長医師は、妻に麻酔薬を投与し、外来に行ってしまっていたために、妻の異変に気付かず、対応も遅れ、取り返しのつかない結果になってしまいました。

 硬膜外麻酔自体は出産以外でも行われていますし、私は、硬膜外麻酔自体を否定するわけではありませんが、一人の医師が外来診療を行いながら硬膜外麻酔を行うのは絶対に めてほしいと思います。

無痛分娩まで
 里帰り出産を希望していた妻は、実家に最も近い神戸市西区のクリニックにお願いすることにしました。クリニックのロコミ評判や和室の分娩室が設置されていることも決め手となりました。妻は、無痛分娩の希望は全くありませんでしたが、院長医師に胎児が大きいことを理由に無痛分娩を強く勧められました。

 分娩前日夜、陣痛促進剤を投与し陣痛が起きており、私は立ち会い分娩に備え、妻と共にクリニックの病室で一緒に夜を明かしました。しかし、一夜明けても本格的な陣痛が来なかったことから、医師の強い勧めにより無痛分娩と吸引分娩を併用することとなり、硬膜外麻酔を実施することとなりました。

 たしかに、「無痛分娩についての説明と同意書」には、「低血圧、頭痛(1%)、微弱陣痛による陣痛促進剤の使用、吸引分娩の頻度増加、薬剤アレルギー、血管内誤注入、感染、出血、麻酔薬のくも膜下投与による広範囲麻酔、神経障害(異常感覚)等が起こりえます。なお不明な点は、担当医にご質問ください」と印字で書いてありましたが、まさかこのような最悪の事態になるとは思いもしませんでした。

(中略)

妻のこと
 妻は面倒見もよく、人を大事にし、誰にでも好かれ、慕われる性格の女性でした。

 妊娠後は、生まれてくる子どものために必要なものを準備をして、その日を待っていました。時にお なか の中で動き回る子どもの様子などを動画で撮影し うれ しそうに見せてくれたりもしました。

 約1年半もの間、妻は頑張り続けましたが、今年の5月12日に息を引き取りました。亡くなったのは急でしたが、神戸で行われた告別式には、遠方にもかかわらず会社の部下、上司、同僚が東京から数多く駆け付けてくださいました。これほど多くの方にお見送りしていただけるとは思ってもみませんでした。

子どものこと
 子どもも母体同様、出産直後の懸命な蘇生により心臓の鼓動は回復しましたが、脳に大きなダメージを受けました。生まれてから一度も意識は回復せず、自発呼吸もできず人工呼吸器による管理が続いております。 胃瘻いろう により栄養剤を胃に注入しており身体は徐々に大きくはなっておりますが、既に脳細胞はほぼ死滅しており今後の回復は望めない状態です。脳による自律的な体のバランス調整が機能せず電解質の濃度が大きく変動したり、肺炎を患うなど厳しい状態が続いております。

今の思い
 この日の出来事をきっかけに私たちの人生は大きく変わってしまいました。

 皆に愛された妻、何の罪もない我が子が、なぜ命を失い、あるいは将来の希望を断たれてしまったのか、悲しくて悔しくてたまりません。これからの人生を孤独に生きて行くことも苦しく、考えるだけで胸が張り裂けそうになります。

 今でも幼い子どもを連れた家族連れを目にするだけで心が大きく痛み、しばらくの間は、家族連れが集う近所のスーパーに行くことすら苦痛でした。

 事故以降、心の底から楽しいと思えた瞬間はありませんし、これからも苦しみを抱えながら生きていきます。私が今できることは、無痛分娩のリスクを伝え、二度と同じような事故が起こらないようにお願いすることだけです。

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