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狭心症治療…超音波の刺激で、新しい血管が作られ血流改善

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狭心症治療…超音波の刺激で、新しい血管が作られ血流改善

 心臓の筋肉に酸素や栄養を送る冠動脈が、動脈硬化で狭まった狭心症。従来の治療が困難な患者のため、体に優しい超音波治療の臨床試験(治験)を東北大学などが進めている。超音波の刺激で心臓に新しい血管が作られ、病状が改善する。3年後の保険適用を目指している。

 狭心症など心臓病の死亡者数は、2015年に19万6000人と40年前の倍に増えた。背景に食生活の欧米化や高齢化などがある。

カテーテル治療とバイパス治療の限界

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 狭心症の治療は、冠動脈を広げる薬のほか、カテーテルという細い管を冠動脈に挿入し、先端の風船を膨らませて押し広げ、ステント(金網状の筒)を留置する治療、血管を移植して血流を確保するバイパス手術がある。しかし、薬が効きにくい患者や、血管が細くてカテーテルが入らなかったり、体力的にバイパス手術ができなかったりする重症例も増えている。

衝撃波治療、1万人に実績

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 同大循環器内科教授の下川宏明さんは、血管の内側の内皮細胞を低出力の衝撃波で刺激すると、血管を広げる作用のある一酸化窒素を放出したという海外の研究報告をヒントに、低出力の衝撃波を使った心臓病の治療法を04年に開発した。

 治療は1日最長3時間、体表面から1か所200発の衝撃波を十数か所に当てる。これを1週間で3回実施。心臓の組織を修復する物質が分泌され、新しい血管ができる。冠動脈の 狭窄きょうさく が治るわけではないが、心臓の血流が良くなり、症状が改善する。低出力なので血管内にたまった老廃物がはがれて飛び、血管を詰まらせる心配もない。05年から同大で取り組み、07年には心筋 梗塞こうそく にも適応を拡大。昨年度までに国内4施設で計50人に実施した。海外でも導入され、25か国で約1万人の患者に実績がある。

 治療前に血管を広げる薬を週6回飲んでいた患者が、治療から3か月後に平均1回以下に減らせたほか、6分間に歩ける距離が平均170メートルから350メートルとほぼ倍に伸びた、などの効果が確認されている。副作用は認められなかった。

 宮城県の50歳代の男性は狭心症でカテーテル治療を何度も受けたが、主治医に「これ以上の治療法はない」と言われた。7年前に衝撃波治療を受け、胸痛や息切れも消え、力仕事ができるまでに回復したという。

超音波、治療時間を短縮

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 ただ、衝撃波は空気中では膨らむ特性があるため、空気が多い肺を傷つけないように避ける必要がある。また1か所ずつ点で当てるため、時間がかかる。

 そこで下川さんは試行錯誤の末、超音波を特殊な条件下で当てると衝撃波と同様な効果を示すことを発見した。超音波は面で伝わるため、治療時間も衝撃波の3分の1に短縮できた。

10施設で治験開始

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 動物実験で有効性と安全性を確認後、14年から同大を含む全国10施設で治験を開始した。18年までにカテーテル治療やバイパス治療が困難な重症狭心症の患者80人に治療を行う予定だ。がんや糖尿病性網膜症、冠動脈に血栓がある場合は、逆に症状が悪化する可能性があるため対象外となる。

 下川さんは「患者自身の自己修復能力を引き出す治療なので副作用は少なく、費用も安い。血流が滞って臓器の機能が低下する他の病気にも対象を広げたい」と期待をかけている。(原隆也)

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