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医療・健康・介護のコラム
腰痛治療、専門医の薦める病院選び
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医療部 加納昭彦
「病院の実力アンケートに一言、苦言を言いたい」
そんなドキッとする言葉から始まるメールが先日、私の元に届いた。静岡赤十字病院脊椎センター(静岡市)センター長の小川潤さんからで、「病院の実力・腰痛治療アンケート」に回答した専門医だった。そんなメールをくれた理由を聞こうと、恐る恐る電話した。
小川さんの主張はこうだ。
「手術件数の多い病院は信頼度が高いというのは、ほとんどの診療科に当てはまる。ただ、腰痛治療にだけは当てはまらないのではないか」
腰痛治療では、どこが悪いのかを見極める診断が手術の技術と同じくらい重要だ。痛みの原因を科学的に説明できることが大切で、画像だけを見て出っ張っている箇所を全部削ることは科学的ではない。中には、もうけのために何か所も削ったり、入れなくてもいい金属を入れたりする施設もあるほか、名声や自己 研鑽 のために件数を増やしている所もあるという。
小川さんによると、仮に手術で治らなくても、その患者と最後まで向き合ってくれるのが良い医師だという。
自分の手術は完璧だと言って患者を放り出す医師がおり、患者は途方に暮れてしまうという。実際、小川さんが所属する静岡赤十字病院には、そんな患者が「どうしたらよいでしょうか」と訪ねてくることも少なくないという。
では、どのように医療機関を選べばよいのか。小川さんは「地元の整形外科か、かかりつけの開業医にどこが良いか紹介してもらうのが一番よいでしょう」と話す。
また、腰痛の原因や治療法について、相手の目を見て、納得いくまでわかりやすく説明してくれる医師を選ぶとよいという。
腰痛治療に詳しい慶応大整形外科教授の松本守雄さんにも、どのように病院を選べばよいか尋ねてみた。
松本さんは「手術を受けた患者の数が多いほど、一般的に手術のレベルは高くなる。病院選びの参考になる」とした上で、その他に病院選びの参考になる情報は何かを教えてくれた。
(1)手術を受けた患者のその後をフォローしているか。
手術が必要な患者に適切な手術をしても、結果が良くならない人は一定の割合で出てしまう。大事なのは、そのような患者をフォローするかどうか。手術のやりっぱなしは良くない。腰痛治療の手術を受けた患者の2年後をどれだけフォローしているかを医師に聞いてほしい。その後連絡がとれなくなる患者もいるため100%のフォローは無理だが、そうしたデータのある医療機関は信頼できる。
(2)30日以内の再手術の割合
最初の手術からあまり時間をおかずに行われる再手術の割合は、手術の手技と手術後の管理の適切さを示す。医療機関側にとってみれば出したくないデータだが、尋ねてみるといい。隠さずに出してくれれば、誠実な医療機関だと判断できる。
(3)手術後の改善度
これは手術の手技のうまさ、診断の確かさを示す。手術から1~2年後など、一定期間が過ぎた後にアンケートをし、その後の経過を聞いている医療機関もある。
2700万人以上が悩まされているという腰痛は国民病だ。小川さんや松本さんは今回、腰痛治療で信頼できる病院を選ぶためのヒントを教えてくれた。2人に共通するのは、術後の経過が良くなくてもしっかりと最後まで向き合ってくれるかどうかという点だろう。
「病院の実力アンケート」のほか、小川さんや松本さんの視点も踏まえ、あなたにとって良い医療機関を探してほしい。
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加納昭彦(かのう・あきひこ)
社会部などを経て2011年4月から医療部。がん、生活習慣病などを担当。趣味はフットサルとランニング。最近、マインドフルネスを始めた。
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慢性の腰痛は内科健診でもよく見かけて、時間があればサービスで対応します。 多くの腰痛は猫背、姿勢、筋力あたりの問題から来ます。 頭の重みと椎体の...
慢性の腰痛は内科健診でもよく見かけて、時間があればサービスで対応します。
多くの腰痛は猫背、姿勢、筋力あたりの問題から来ます。
頭の重みと椎体のバランスの問題で、しばしば、長時間のデスクワークなどの仕事やスポーツやファッションの影響もあります。
状況や本人の気分などにより、目指すゴールは変わります。
高齢者の場合、長年かけてできた姿勢を短時間に矯正しようとすると悪くなる場合もありますし、社会人に仕事の変更を強要することも難しいでしょう。
「どこの整形外科や整骨院がいいんですか?」
とか言われても、なかなか難しいものがあります。
医者の仕事は専門家同士でさえブラックボックスは大きいですし、医師と患者の相性の問題もあります。
ただ、元放射線科医の目線から言えば、難治性の腰痛に対して、他医や他科の眼をどこかでいれる整形外科医は信用できるように思います。
(生活習慣や内科系疾患から直接間接に発生する腰痛なんかもありますし、ヘルニアなどの慢性腰痛に隠れて、内科疾患が発生したりすることもあります。
種々の痛みを混同したり、主治医に言い忘れるなどが原因です。)
そういう総合的な診断、末永いおつきあいの部分と手術は少し性質が違いますが、疾患や患者状況の理解という意味では共通になるのかなと思います。
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