健やかキッズ
妊娠・育児・性の悩み
けんか、自ら解決する力育む
成長の契機、大人の介入控える
子どものけんかにどう対応したらよいかと悩む大人は多い。専門家は「けんかは子どもたちが自分たちで問題を解決する力を育む場。大人がすぐに解決しようとしないで」とアドバイスする。
「ピーステーブル」。東京都新宿区の「新宿せいが子ども園」の一角に、こんな名が付いた机と椅子がある。3~6歳の園児がけんかをしたら、自主的にここに座って話し合う。机の横のボードには「3か条」が書かれている。
あいてのはなしをさいごまでしっかりきこう
はなしをきくときはあいてのかおをみよう
じぶんのきもちをことばでいおう
「ともだちとけんかになったけど、テーブルに行って、わらわせて、すぐなかなおりしたよ」と年長の男児(6)。園長の藤森平司さんは「けんかの場からいったん離れることで心が落ち着き、子どもだけで話し合って解決できてしまうんです」と話す。
もちろん、相手をかんだり、ひっかいたり、物を投げたりするけんかや、言葉の暴力に対しては「やってはだめ」と伝え、わかってもらわなければならない。大事なのは、大人は見守りながらも簡単に介入せず、子ども同士で解決する環境を作ってやることだ。
自分で解決できる子を育むにはどうすればいいか。東京家政大学ナースリールーム主任の井桁容子さんは「特に言語能力が発達する3歳くらいまでは、大人が見本を見せます。相手の気持ちも含め、その場の状況を説明してあげましょう」と助言する。
たとえば、子ども支援センターなどで備え付けのおもちゃを、他の子が使っているのに自分の子が取り上げて泣かせてしまった場合、「謝りなさい」としかりつける親が多い。「気持ちが伴わないのに『ごめんなさい』と言わされると、自分の心をだますことを覚え、その場しのぎで使うようになる」と井桁さん。
この場合、「○○ちゃんが、悲しくて泣いているよ」と相手の子の気持ちを伝え、相手の子には「驚かせてごめんね」と自ら謝ってみせる。親の姿を見て子どもはそうするものなのかと学ぶという。
わが子の高ぶった気持ちをわかってあげ、その処理方法を教えるのも大事だ。おもちゃを取った子なら、「欲しくなっちゃったんだね。使い終わるまで待とう」「ちょっと似たのでがまんしようか」といった具合だ。次に似たようなトラブルが起きた場面で生かすことができる。
逆におもちゃを取られっぱなしの子には「取り返しに行こう」と促すのもいい。「傷つけられたら怒っていいということを教える。相手の子も他人の思いを知る機会になります」と井桁さんは話す。
子どものけんかは成長のきっかけとして、肯定的にとらえる専門家が多い。保育園で研修も行う大妻女子大学教授の岡健さんも「けんかをするということは、思いを主張できるということ。相手も尊重し、自分の思いも言える子に育つには、けんかの経験も必要です」と指摘している。
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