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あなたが障害者になった場合…自分で申請し、障害年金制度を活用できますか?

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あなたが障害者になった場合…自分で申請し、障害年金制度を活用できますか?

 前回のコラムで、障害年金の仕組みについて、2階建て構造になっていることを紹介しました。

 神経眼科、心療眼科の外来を開いている関係で、私は障害者手帳、障害年金、介護保険などのための診断書を作成しています。こうした中、制度についての知識が次第に多くなるにつれて、いくつか感じるようになった点があります。

 まず、制度が複雑で、「障害を持った患者さんがそれを十分理解し、利用するのはなかなか容易ではなかろう」という実感です。

 読者の皆さんは、もし自分が不慮の事故や病気で障害を被った場合、どういう公的な保障や支援が得られるのか、大まかにでも知っているでしょうか。

 つまり、万一、障害者になった時、自分でこれを申請して活用できる自信がありますか。障害を持ってからでは、その病気や障害の身体的克服に圧倒的なエネルギーをとられてしまうため、制度の利用方法を勉強するゆとりは少ないでしょう。調べてみると、受給資格がないことに気づく事態もありえますが、もう後の祭りです。

 日本は第2次世界大戦後、驚異的な復興を遂げたことがよくほめられますが、戦後日本の社会環境、福祉、医療といった国民の福利の制度構築についてはどうだったのでしょう。身体障害者福祉法や労災保険は昭和20年代前半に、おそらく連合国軍総司令部(GHQ)の影響下で成立しています。国民年金法は昭和30年代、介護保険法は平成9年の成立です。はじめから確固とした青写真があったのではなく、時代時代で、付け足すように関連の法律ができた結果、若干統一性を欠き、不公平さ、複雑さとわかりにくさが今日に残っているようにみえます。

 それはともかく、複雑な制度であれ、健康なうちに、ある程度頭に入れておかなければ、必要時に利用できません。

 数年前、視神経の病気に両眼ともやられ、失明に近い状態になった30歳代の男性は、障害者手帳は取得しましたが、障害年金は受給できませんでした。義務化されているにもかかわらず、保険料を支払っていなかったからです。そのことを知って、彼も家族も 愕然(がくぜん) としていましたが、もはや救うことはできません。

 さまざまな事情があるでしょうが、平成26年の国民年金未加入者は368万人にも上ります。障害年金、老齢年金、労災保険、介護保険などは、あくまで民間の生命保険などと同様の保険ですから、保険料を支払っていなければ受給できないのは当然です(労災保険は事業主に支払い義務があります)。未加入者は国のセイフティーネットを自ら放棄していることになり、いざという時に、この男性が経験したような状況になってしまいます。

 日本国の弱者対策は、高齢化が急速に進む中、高齢者ケアに関する問題が目立ちますが、その陰に隠れやすい国民の傷病に対する備えの在り方についても、我々はもっともっと関心を持つべきだと感じます。(若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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