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日本認知症ケア学会・読売認知症ケア賞

イベント・フォーラム

[第13回日本認知症ケア学会・読売認知症ケア賞](下)実践ケア賞、講評

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実践ケア賞

在宅診療、いち早く…のぞみメモリークリニック 木之下徹さん 55 (東京都三鷹市)

日本認知症ケア学会・読売認知症ケア賞(下)実践ケア賞、講評

 「認知症になっていい」が信念だ。「なってしまったら終わり」という世間のネガティブなイメージを 払拭ふっしょく しようと、活動を続けてきた。

 認知症に特化した在宅診療に、東京都品川区で取り組み始めたのは、介護保険制度が創設された直後の2001年頃だった。様々な理由から、家を出られないでいる人たちのもとを訪れ、寄り添ってきた。また、地域で認知症に関わる人たちが、医療や行政といった立場を超えて集い、語り合う活動も10年以上継続して実施。15年には東京都三鷹市で、認知症専門の外来クリニックを開設した。

 認知症やその予備軍と呼ばれる人たちが増えている今だからこそ、医師が早い段階から関わり、診断するだけでなく、一人ひとりが望む生き方を一緒に模索することが大切だと痛感。「必要なのは、認知症を自分のこととして受け止め、その人に何かをしてあげるのではなく、『その人と何をするか』という姿勢だ」と語り、関わる人たちに「伴走者としての視点」を求める。

笑い交え理解広げる…じゅんちゃん一座(青森県十和田市)

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 できないことばかり見て悲観的になるのではなく、笑いに変えることで元気になってほしい。そんな願いをこめ、ユーモアと方言を交えた寸劇=写真=で認知症を紹介している。

 十和田市立中央病院(青森県)の精神科医・竹内淳子さん(52)が保健師やケアマネジャーに呼びかけ、2011年に発足。学校や職場のメンタルヘルス研修などに呼ばれ、公演回数は計116回にのぼる。

 寸劇では、老夫婦と長男、その妻の4人家族「和田家」を舞台に、財布を置いた場所を忘れて嫁が盗んだと疑う しゅうと と嫁の対立や、介護うつ、運転免許の返納を巡るやり取りが繰り広げられる。コミカルなストーリーを通して、認知症への理解を広げてきた。

 今後は、子ども向けの上演にさらに力を入れ、認知症になっても暮らしやすい地域作りに貢献していくつもりだ。竹内さんは「寸劇を見た人が笑顔になってつながり、互いに見守り合う“見守りの循環”の形を作っていきたい」と話している。

当事者間の相談窓口…おれんじドア(仙台市)

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当事者の相談を受ける丹野さん(右)

 「認知症になったら何もできなくなる」。そんな偏見や誤解から生まれる当事者の不安を和らげようと、当事者が当事者の話を聞く相談窓口として2015年、仙台市に設けられた。

 発起人は、39歳の時、若年性認知症と診断された丹野智文さん(43)。当初は不安で泣いてばかりいたが、診断後も明るく生きる仲間と出会ったことで救われた。自身の経験から、認知症の診断を受けて落ち込む人が、笑顔を取り戻すきっかけを作りたいと考え、医師やケアマネジャーらに協力を求めた。

 開催は毎月1回で、本人と家族が、別々のグループで語り合う。認知症だからできないと決めつけず、本人の思いを尊重し、その人に必要な居場所への橋渡しをするよう努めている。活動名には、そうした“扉”の役割を果たしたいとの願いが込められている。

 受賞を受け、丹野さんは「取り組みの意義を理解してもらえたことがうれしい。当事者が前向きに生きる姿を発信していきたい」と語った。

講評

世界初の偉業、施策の礎築く…今井幸充・選考委員長

 功労賞の小阪氏は、臨床医としての立場を貫く傍ら、臨床神経病理学者として地道な研究活動を続け、「レビー小体型認知症」の発見という世界初の偉業を成し遂げた。この新たな知見が認知症の人や福祉・医療関係者にもたらした利益は計り知れない。

 同じく功労賞の中村氏は、研究者、臨床医、教育者の立場から日本老年医学の発展に尽くしてきた。認知症が社会的な関心を集める前から、福祉と医療の協働や家族支援の重要性を訴え、現在の施策の礎を築いた。今も臨床試験の最前線で活躍している。

 実践ケア賞の「じゅんちゃん一座」は、方言やユーモアを交えた「寸劇」という手法で認知症の啓発を行い、正しい知識をわかりやすく伝えることで、地域における介護の共有化に尽くした。木之下氏は、認知症専門の在宅診療を長年続け、「認知症と共にある暮らし」の姿や、地域に根ざしたケアの可能性を住民や行政に伝えた。「おれんじドア」は、当事者が当事者の相談を受けるという先駆的な活動を行い、偏見により社会との接点を自ら閉ざそうとする人たちに新たな希望を与えた。

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