文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

日本認知症ケア学会・読売認知症ケア賞

イベント・フォーラム

[第13回日本認知症ケア学会・読売認知症ケア賞](上)功労賞

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 認知症の医療や介護に功績のあった人や団体に贈られる「日本認知症ケア学会・読売認知症ケア賞」(日本認知症ケア学会主催、読売新聞社特別後援)の第13回受賞者が決まり、5月26日、沖縄県宜野湾市の沖縄コンベンションセンターで授賞式が行われた。長年の取り組みをたたえる功労賞に2人、現場での活動を評価する実践ケア賞に1人・2団体が選ばれた。

 【主催】   日本認知症ケア学会
 【特別後援】 読売新聞社
 【後援】   厚生労働省、沖縄県、宜野湾市ほか
 【協賛】   エーザイ

功労賞

「レビー小体型」発見と啓発…横浜市立大名誉教授・クリニック医庵センター南 小阪憲司さん 77 (横浜市)

日本認知症ケア学会・読売認知症ケア賞(上)功労賞

「ゆっくり話を聞き、本人や家族を理解するのが診療の基本」と話す小阪さん(横浜市で)

 1970年代の研究により、「レビー小体型認知症」を発見した。存在しない人や物が見える幻視などの症状が特徴だ。このタイプの症例を、76年に世界で初めて報告し、96年に国際的な診断基準が作られるきっかけとなった。

 レビー小体型は、早期に発見し、治療をすれば、幻視などの症状が改善することもあるという。しかし、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病などと誤診されるケースも少なくない。そのため、適切な診断と治療が受けられない人を減らそうと、医療関係者の研究会や、当事者同士が支え合うネットワークを作るなどの啓発活動にも力を入れ、症状や患者への理解を広げてきた。

 今回の受賞を喜びながら、「現役でいられる限り、患者や家族に寄り添い続けていきたい」と語り、その使命感は衰えを見せない。

 三重県伊勢市の出身。小学5年生の頃、国際赤十字の創設者アンリ・デュナンの伝記を読んで感動し、医師を目指した。進学先の金沢大で、当時はあまり知られていなかった認知症に関心を持ち、長きにわたる臨床と研究生活が始まった。そして、名誉教授となった現在も、横浜市のクリニックで患者の診察を行い、老人ホームへの訪問診療にも携わっている。

 診察では、患者や家族との会話を大切にしている。認知機能の衰えや、うつ症状、妄想の有無について丁寧に聞き取る。初診では、3時間かかることも少なくなかった。今は再診のみ行っている。

 「その人をよく理解し、信頼関係を築かなければ、病気を理解することもできない」という信念は、半世紀以上の間、変わってはいない。

研究40年、家族支援にも力…広島大名誉教授・洛和会京都新薬開発支援センター 中村重信さん 78 (京都市)

id=20170627-027-OYTEI50012,rev=5,headline=false,link=true,float=left,lineFeed=true

今も新薬開発の最前線で活躍している中村さん(京都市で)

 認知症治療薬の研究・開発に、長く携わってきた。京都大医学部の助教授時代から、その歳月は40年近い。「医者として、薬で治したいという思いが強くてね」。治療への情熱が、研究生活を支えてきた。

 それは今も変わらず、「アルツハイマー病になってから治すという発想を転換し、ならないための新薬の開発に取り組んでいるんです」と意気込む。

 患者と関わり続ける中で、薬の治療だけでは不十分なことも実感した。「認知症本人への支援はもちろん、家族への支援も大切だ」との考えから、「認知症の人と家族の会」(京都市)の活動にも積極的に参加し、現在は顧問を務めている。

 その経験から、家族への支援で特に大切だと感じているのは、同じ立場の人たちが情報交換をする場を設けることだという。「終わりが見えない介護に向き合っている家族が燃え尽きてしまわないよう、私たちの会では、上手な息抜きの仕方など、負担を和らげる過ごし方について、みんなで知恵を出し合っている」と話す。

 今年4月に京都市で開かれた「第32回国際アルツハイマー病協会国際会議」では、組織委員長を務めた。同市で2004年に行われた時に比べ、今回は、アジアやアフリカの国々からの参加が増えている状況に驚かされた。

 認知症は、欧米や日本だけの問題ではなく、すでに世界規模で解決すべきテーマとなっている。「日本の介護にも様々な課題は残されているが、今後は、途上国での認知症ケアの仕組みの構築など、グローバルな視点で介護の問題を捉えていくべきだ」。医師として、研究者として、決意を新たにしている。

 ▽選考委員長=今井 (ゆき)(みつ) (和光病院院長)▽選考委員=池田恵利子(あい権利擁護支援ネット理事)、 (おさ)() 久雄(桜美林大教授)、落合恵子(作家)、加藤伸司(東北福祉大教授)、中村祐(香川大教授)、堀内ふき(佐久大学長)、 (わく)(なみ) 淳子(特定医療法人アガペ会理事長)、猪熊律子(読売新聞東京本社社会保障部長)(敬称略)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

イベント・フォーラムの一覧を見る

日本認知症ケア学会・読売認知症ケア賞

最新記事