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豊かな海のハモ 繊細な味…徳島県小松島市
関西地方を中心に好まれる夏の味覚、ハモ。京都の祇園祭や大阪の天神祭の時期にはおなじみの魚だ。国内有数の漁獲量を誇る徳島県小松島市の漁港を訪ねた。
小松島市はハモの漁場、紀伊水道に面した港町。徳島県側の紀伊水道には吉野川から豊富なミネラルが流れ込む。四国沖を流れる黒潮と、瀬戸内海の潮流も入り交じり、豊かな海域が作られている。
6月初めに漁が始まり、梅雨明けにかけ本格化する。夏が旬なのは、秋の産卵期を前に脂がのるため。特にメスは美味とされる。「豊かな海で育った徳島のハモは、京阪神で古くから高値で取引されてきたんよ」。小松島漁協参事の三原秀之さんが言う。
船は日暮れ前に出港し、日が落ちると網を下ろす。夜通し網を上げ下げする、底引き網漁だ。早朝には漁船が次々に港に戻ってきた。
ハモが傷つかないよう、船に揚げたらすぐ水槽に放つ。港では「胴丸」という籠に入れて運び、専用の選別台にかける。選別台のハモは、飛び出さんばかり。資源保護のため、子持ちや1匹200グラム以下のものは海に帰す。選別したら専用の水槽車や保冷車で、鮮度を保ったまま京阪神などに出荷する。
勢い余って選別台から落ちたハモを観察してみた。体長は80センチほど。ぬるりとした表皮はウナギのよう。体をむちのようにしならせて跳ね回る。丸い目玉、とがった口。口の中には鋭い歯が並ぶ。「油断するとかまれるよ」。近くにいた漁師の住村洋昌さんが声をかけてくれた。
新鮮なものを味わおう。港近くのレストラン「おさかなダイニングAWAGO」にお邪魔した。代表的な食べ方は、さっと湯がいた「湯引き」と「天ぷら」。店では「フライ」も出しているという。
全身に小骨があるハモは、身を開いて、皮一枚を残し細かく包丁を入れる「骨切り」が必須。手慣れた料理人しかできない技だ。小骨が断たれて口当たりが良くなり、刻まれた身は熱を通すと花のように美しく開く。
湯引きは骨を感じることもなくふわりと軟らかい。天ぷらはほのかなうまみが感じられ、フライはほくほくだ。淡泊な骨っぽい魚という先入観があったが、程良いかみ応えがあり、繊細な身が優しく口の中でほどけていった。
東京ではなかなか味わえない味覚。一足先に夏を迎えたような、ぜいたくな気分になった。
メモ 小松島漁協はハモの地域ブランド化と、身近に味わってもらうための取り組みに力を入れる。骨切り専用の機械を導入して加工を容易にしたほか、8月3日を「ハモの日」として地元飲食店でキャンペーンも行う。
加工品は、地元の保育園や小中学校の給食用に納入するほか、一般消費者も購入可能。同漁協のホームページ( http://www.jf-komatsushima.com/ )で、湯引きにもなる「 鱧 しゃぶ」と「鱧の天ぷら」を通信販売している。
(上原三和)
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