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医療・健康・介護のコラム
足と足裏の感覚を育てる! 関節の働きに迫る(下)
足の安定性と足首の可動性が重要
関節別アプローチ理論では、まず、足首の可動性が高いことが、とても大切とされています。
そのためには、足首より下の、足の甲や足裏が安定していることが前提条件になります。せっかく力を発揮しても、安定させる必要がある部分がグラグラと動いてしまうと、その上の可動性が必要な関節を自由に動かしにくくなってしまうからです。
ところが、足首の関節周辺の筋肉は硬くなりやすく、足部を意識しないで動いたり、運動をしたりする状態が続くと、柔軟性が失われてしまいます。足元が不安定な靴を履き続けたために、筋肉の使い方が偏り、関節が硬くなることもあります。特に、つま先を膝の方向に引き付ける方向の動きは柔軟性が落ちやすいので、アキレス 腱 を単独で伸ばすようなストレッチを取り入れるといいと思います。
本来、膝関節には安定性が必要ですが、足関節の柔軟性が低下すると、それを補うために膝関節が無理な動きをするようになり、不安定になってしまいます。ですから、膝が安定した動きができるように意識してトレーニングすることが大切なのです。その一つ上の関節、股関節は可動性が重要なのですが、足首の関節と同じく硬くなりやすいので、常に柔軟性を高めておく必要があります。
股関節が十分柔らかいかをチェックするには、片足立ちをして反対側の膝の中心の高さまで足の裏が持ち上がるかどうか、試してみてください。膝の中心より低い場合、股関節の柔軟性が不十分です。股関節が硬く、十分に膝が上がらない状態でものをまたぐような動作をすると、足を引き上げるために前かがみになって腰椎を過度に曲げるほかなくなり、骨盤や体幹の安定性が保てません。こうしたことの繰り返しで、腰椎に負担がかかり、腰痛の発症リスクが増加することが明らかになっています。
このように、ある関節が十分に動かないと、その一つ上の関節に悪影響が出ます。つまり、足首の関節があまり動かないと、その上にある膝関節がグラグラしてしまい、痛みを感じるようになります。股関節の動きが硬くなると、体幹の安定性が保てなくなり、腰痛が起きやすくなります。胸椎の動きやすさが低下すると、肩甲帯の安定性が保たれず、負担が繰り返されるとやがて痛みが生じ、肩関節の可動域も狭まることがあります。そうすることで、四十肩のような症状が出てきてしまう恐れがあります。
地面と接している足裏、足の安定性を持たせるためのトレーニングは、直接的なものに加え、足以外の部位へのアプローチも必須となります。このアプローチ方法はたくさんありますので、今後、エクササイズの方法等を紹介していきたいと思います。
それではみなさん、梅雨空に負けない元気を出して過ごしてくださいね。また次回のカフェでお会いしましょう!
股関節の可動域が腰椎に及ぼす影響
(1)は股関節可動性が高く、上げた方の足の裏が反対の足の膝より上にある。腰が曲がったりせず、体幹の安定性が保たれている。(2)は股関節の可動性が低く、この状態で(3)のように、ものをまたぐ動作を行うと、腰椎が過度に前方に曲がり、体幹の安定性が低下して腰痛発症のリスクが高まる。
(「臨床スポーツ医学」2016年10月号より引用・改編)
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