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宋美玄のママライフ実況中継

コラム

安全な無痛分娩が広まることを願います

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歩くのが早くなった息子です

歩くのが早くなった息子です

 息子は1歳7か月になりました。相変わらずほとんどしゃべりませんが、「ママだれ?」と聞くと私を指さすなど、言葉は理解しているようです。歩くまでは遅かったのに、歩きだした時はいきなりスタスタ動けたように、突然しゃべりだすのかなあ、などと思っています。娘は、こちらからお姉さんらしさを押し付けたりすることはないのですが、弟にお絵かきアプリの使い方を教えたり、絵本を読んであげたりしています。そんな二人の姿を見ているだけで、幸せな気持ちになります。

 このところ、無痛 分娩ぶんべん 関連の事故のニュースが続いています。事故の内容と無痛分娩との直接の関係がわかりにくいのもありますが、妊婦さんからは「無痛分娩を考えているのに、ニュースのせいでとても怖くなってきた」という相談を受けるようになりました。

 報道されている事故は総合病院ではなく、個人産院で起こっているものばかりです。京都の産院で出産した母子が重い後遺症を負った件で、「お産は何が起こるか分からないので、産科医が1人しかいない施設では行うべきではない」との手記を、産婦の母親であるロシア人女性が発表した時は、周産期医療従事者の間でも議論になりました。

 先進国でも途上国でも、海外では出産を大きなバースセンターに集めて行っているところが多いのに比べ、日本では小規模な産院があちこちにあるのが特徴です。産科医不足が深刻な社会問題となり、集約化の必要性が叫ばれましたが、それほど進んでいません。都市と地方では事情が違うこともあり、集約化だけが答ではないと思いますが、これから変化があるかもしれません。

 妊娠や出産は、「この妊婦さんはリスクが少ないから、無事にお産が終わるだろう」と予見できるようなものではありません。お産は、誰しもが1分後には何が起こるか分からないものです。それだけに、地域ごとに急変時に対応できる周産期センターが必要だと思います。私個人としては、施設間の連携が円滑に行われるのであれば、「産科医が1人しかいない施設は分娩を扱ってはいけない」とは思っていません。日本の母体死亡率や周産期死亡率は世界的に見ても低いからです。私自身、第1子の時は、妊娠糖尿病のため高次医療施設に紹介されましたが、信頼している先生の個人産院で産もうとしていました。

 個人産院ではない病院の場合でも同じです。高次医療施設へ転院・搬送した方がよいという判断が適切になされ、受け入れられる施設に救急車で運べるのであれば、問題ないと思います。逆を言えば、「適切な判断」と「受け入れ先」のどちらが欠けてもだめだと思います。

 今回の一連の報道では、詳細が分からない部分もありますが、受け入れ態勢ではなく、個人産院の中での対応に問題があった可能性もあります。規模の大きい病院の産科ならば、能力が十分でない医師がいても、同僚がカバーすることが可能です。しかし、1人しか産科医のいない施設ではそれが難しい。ここが、個人産院の多い現体制の問題点だと考えています。

 無痛分娩を選ぶのであれば、「事前に予定日を決めて出産する『計画分娩』ではなく、陣痛がくるタイミングに麻酔科医が麻酔をかけてくれる」ところが理想的です。そういう施設で行えるシステム作りが必要です。次回は、お産の安全性を高める取り組みについてお話しします。

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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2件 のコメント

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確定と未確定とグレーゾーンの

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

無痛分娩や産科救急の特殊性もありますが、他の科や救急医療との相似が医療連携や医療圏再編の話です。 地域や各科の救急疾患の特性の差異を踏まえて再構...

無痛分娩や産科救急の特殊性もありますが、他の科や救急医療との相似が医療連携や医療圏再編の話です。
地域や各科の救急疾患の特性の差異を踏まえて再構築されるべきでしょう。
各科医の守備範囲や採算の問題もあって、産科と麻酔科を守るためにも、全科のバランスが大事になります。

例えば、阪神間でも市や区の大小があって、基幹病院や教育機関、企業の所在の偏在も含めて難しく絡み合っています。
10万人都市と100万人都市、1500万人都市圏では抱えられる人材や器材に差異や偏りがあります。
必ずしもすべて自前である必要はなく、医療崩壊を防ぐべく、各自が努力しています。

中規模病院以上の勤務医や医療者の一部の働きにくさなどが、個人医院やフリーランスが増える要因でもあります。
特に、急性期と慢性期の病院の機能や収益構造の分離の影響が地域や施設によってかじ取りに大きな影響を与えています。

経済規模の限界はあるものの、個人や少数の方が医療が均質になるメリットはありますし、達人なら少人数のマイナスはあっても、メリットの方が大きい部分もあるでしょう。
一方で、同じミスでも大きな施設で手を尽くして助からなかった場合、許されやすい部分もあります。

骨形態計測学会でも、骨粗鬆症からの大腿骨頸部骨折を、生活習慣病に伴う脳卒中や心筋梗塞のように、予期しうる救急疾患として扱うことが提唱されていました。
スポーツやお祭りの外傷も外傷頻発の予測は可能です。

最後は結果論ですが、100%偶発的な事象と必然的な事象は違います。
ということは、分娩の予定時期(他科であれば手術の発生時期)が外れた時でも、WIN-WINになる医療システムが患者のためにも必要になりますね。

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計画分娩しました

はなまる

第一子のときは自然陣発後の硬膜外麻酔で産みました。今回は、突然陣痛で母親がいなくなっては第一子が不安だろうし、夫の仕事の予定を考慮し、計画で硬膜...

第一子のときは自然陣発後の硬膜外麻酔で産みました。今回は、突然陣痛で母親がいなくなっては第一子が不安だろうし、夫の仕事の予定を考慮し、計画で硬膜外麻酔下に出産しました。
結論からいえば、第一子、二子ともに陣痛誘発剤のお世話になりましたが、母子ともに健康です。
だだ、第一子のときは誘発剤で本陣痛がきたので、5時間で出産できましたが、計画の今回は誘発剤でも陣痛がなかなかのってこず、20時間オーバーの難産でした。
麻酔、誘発剤ともに投与量が多くなり、頭痛、嘔吐など気分不良が出現したため、途中で減量を申し出ましたが、体制がととのっておらず、また担当の産科医も麻酔に明るいわけではないため、中止かこのまま使い続けるかを自分で選択してと言われました。
私と夫は医師なので、結局、誘発剤は中止、麻酔は継続を選択して産みましたが、医療知識のないひとに(しかも陣痛中に)選択できるのかな、と疑問。何がおこっても、選択した自己責任ということでしょうかね。

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