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コウノドリ先生 いのちの話

からだコラム

[コウノドリ先生 いのちの話]母子の安全こそ最優先

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 当たり前の事実ほど、誤解を招きやすいものだからね――。名探偵シャーロック・ホームズの名言を踏まえて、最終回となるコラムを書き進めます。

 着床後、胎児は胎盤を通してお母さんから酸素と栄養をもらって成長し、10か月目に 分娩ぶんべん する。これが通常の妊娠経過です。妊産婦死亡は10万人に4人ほどと少なく、欧米諸国にも引けを取らない数値です。各国でお産の方法にも大差ありません。

 大きな違いは、日本では、方々に散らばる小規模医療機関が正常分娩を、周産期センターなど大病院が危険を伴う分娩を扱う「すみ分け」になっている点です。

 妊婦さんはたいてい「普通に生まれて当たり前。自分の身に危険は降りかからないから、家に近い施設で産んでも大丈夫」と思うでしょう。でも、どこで産んでも、健康なお母さんでも、「当たり前」のお産が突如、危険な状況に転ずることがあるのが現実です。

 統計上、分娩は案ずる必要がなく産むのも やす いものに見えるかもしれません。しかし、大出血や胎児仮死、最近報道された麻酔事故など、危険な症例はどこで分娩していても一定の確率で起き、日本ではそんな時は周産期センターなどへ搬送するというシステムで補ってきました。母子の死亡、後遺障害を負った症例を目の当たりにすると、妊婦さんが思い描いたであろう理想と現実のギャップに、戸惑うこともしばしばです。

 防ぎ得た周産期死亡がゼロにならない限り、「日本の周産期は安全」と言ってはならないと私は考えます。母子の安全こそが最優先事項だと、最後にもう一度、強調しておきます。このコラムが、次世代に命のバトンを渡す重みある営みに思いを巡らせる機会になっていたならば最上の喜びです。

 (りんくう総合医療センター産婦人科部長 荻田和秀)

 (おわり)

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