コウノドリ先生 いのちの話
からだコラム
[コウノドリ先生 いのちの話]母子の安全こそ最優先
当たり前の事実ほど、誤解を招きやすいものだからね――。名探偵シャーロック・ホームズの名言を踏まえて、最終回となるコラムを書き進めます。
着床後、胎児は胎盤を通してお母さんから酸素と栄養をもらって成長し、10か月目に
大きな違いは、日本では、方々に散らばる小規模医療機関が正常分娩を、周産期センターなど大病院が危険を伴う分娩を扱う「すみ分け」になっている点です。
妊婦さんはたいてい「普通に生まれて当たり前。自分の身に危険は降りかからないから、家に近い施設で産んでも大丈夫」と思うでしょう。でも、どこで産んでも、健康なお母さんでも、「当たり前」のお産が突如、危険な状況に転ずることがあるのが現実です。
統計上、分娩は案ずる必要がなく産むのも
防ぎ得た周産期死亡がゼロにならない限り、「日本の周産期は安全」と言ってはならないと私は考えます。母子の安全こそが最優先事項だと、最後にもう一度、強調しておきます。このコラムが、次世代に命のバトンを渡す重みある営みに思いを巡らせる機会になっていたならば最上の喜びです。
(りんくう総合医療センター産婦人科部長 荻田和秀)
(おわり)
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