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宋美玄のママライフ実況中継

コラム

少子化対策に一夫多妻制は有効?

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少子化対策に一夫多妻制は有効?

アジサイに興味を持った息子です

 週末、兵庫県で開かれた日本母性看護学会学術集会のセミナーで、フランス人のベルナデット・ド・ガスケ医師の提唱するお産のあり方(ガスケ・アプローチ)についてお話ししてきました。

 参加者の多くは助産師のようでしたが、赤ちゃんが体の向きを変えることなくポロンと生まれてくる動画に、すごく衝撃を受けているのがわかりました。ガスケ先生が来日して行うセミナーが、来月、横浜市で開催される日本周産期・新生児医学会の学術集会の2日目にあります。興味のある方は是非聴きに行ってください。

 前回は、結婚がしづらくなって少子化が起こっているということを書きました。こういうときに、必ず出る意見があります。「婚外子を認めればいい」「一夫多妻制(もしくは多夫多妻制)にすればいい」というものです。今日は、それについて、私の意見を述べたいと思います。

 現在生まれてくる子供のうち、非嫡出子は約2%です。子供は生まれ落ちる場所を選べませんから、嫡出子かどうかで差別されるべきではないし(相続については最高裁で嫡出子と同様に認めるとの判例が出て話題になりました)、カップルのパートナーシップのあり方についての多様性は認められてしかるべきと思います。

 男性が結婚、もしくは養育をしないと宣言しているために妊娠の継続を諦める女性は少なくありません。ひとり親家庭の経済的困窮が社会問題になっていることから、一人で子育てをする人への支援(子供の親の養育費支払い義務の強化を含めて)も必要だと思います。

 しかし、ひとり親を支援したり、事実婚と法律婚の差をなくしたりすることは貧困対策や多様性を認めることにはなりますが、実際にそれで子供を産む人が何万人も何十万人も増えて少子化の解決策になる、とは思いません。制度が変わっても、文化までは大きく変わらないと思うからです。

 「一夫多妻制が認められたり、非嫡出子を女性が一人で育てやすい社会になったりすれば、いくらでも子供を作る用意がある」という男性の声をよく聞きます。そういう人は、「俺個人」の目線で見れば、少子化が目覚ましく解消されることになるかもしれません。しかし、男女はほぼ同数しか生まれてきません。これでは「勝ち組」の男性がたくさん子供を持てるようになる一方、子供を持てない男性が増えるのではないでしょうか。ごく少数の、ケタ違いの富裕層男性がたくさんの女性との間に子供をもうけるようになれば、子供を産まないままだったかもしれない女性が子供を産む可能性はあります。が、社会にインパクトを与えるほどの数にはならないでしょう。

 「少子化の解決」や「多様性を認める」ことと、無責任に子供をもうけることは、話が違うと思います。婚外子が多く、少子化から回復した国として、フランスがよく例に出されます。しかし、フランスには事実婚でも役所に届けを出せる制度があります。日本の婚姻制度に近いもので、気軽に考えられているわけではないようです。

 少子化対策としての一夫多妻制や婚外子推奨についての私の意見を述べました。今後も男女ともに親が責任を持って子供を養育するという前提で、少子化解決策を考えていきたいと思います。

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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4件 のコメント

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家族や教育の要素分解とグルーピング

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

高度文明化社会において、社会および社会人の在り方も変わる中で、なかなか難しい問題と思います。 子供の成長にとって必要なのは、家族なのか、親なのか...

高度文明化社会において、社会および社会人の在り方も変わる中で、なかなか難しい問題と思います。
子供の成長にとって必要なのは、家族なのか、親なのか、動作主体を問わない行為なのか?
同じ空間にいること、ケア、フィーディング、ティーチング、コーチング、などなど、親や教師の要素も色々ありますが、誰がどの役割をこなすか?

結婚などの社会制度は他の制度との親和性の大小もあります。
地域、宗教、時代が変われば男女関係も様々で、英国でも王の離婚が歴史的な事件や変化の原因になりました。

ただ、一夫多妻制もオープンにしたり、積極運用になると危惧される通りの責任放棄に繋がります。
なので、おそらく、そういう部分を丁寧に紐解く必要があると思います。

読売新聞には保育所や貧困家庭の問題の記事もよく書かれていますが、「ある種の思想的な聖戦」の論理は様々な犠牲者を生みます。

未だに「研修医の研修時間は労働時間ではない」と言ってはばからない偉い医師も多いですが、そこまでするほど「一部の人間の認識する正しい生き方」は万人に正しい事でしょうか?

ユダヤの母系社会が知られていますが、信頼と相互不信のどちらをベースに社会や制度を組み上げるのが正解かの答えはありませんし、より良い社会の形成にはどちらも大事で、裏表の多様なルールや実行方法を考えてやる必要があります。

我々、団塊ジュニア世代育ちでカトリックの潜在的影響を受けていると、「一夫一妻の家庭教育ありき」で考えるほうが親しみやすいという問題があります。
しかし、自分たちの正解や正義が生み出す問題もよく理解する必要があるのではないかと思います。
本文への非難ではなく、角度を変えて、議論を深める必要があるのではないかと思います。

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ガスケアプローチ

りん

前半のガスケアプローチについてのみのコメントですが…。 もうすぐ予定日の妊婦ですが、バースプランにガスケアプローチ(回旋しない生理的なお産)とか...

前半のガスケアプローチについてのみのコメントですが…。
もうすぐ予定日の妊婦ですが、バースプランにガスケアプローチ(回旋しない生理的なお産)とかいたところ、バースプランの面談を担当した助産師は、持参したガスケ医師の著書に目もくれず、「回旋しないお産なんてありません」と言い放ちました。
「トンデモ医学の信奉者」のように思われたくなかったので、宋先生の名前も出してみましたが無駄でした。今回は望んだお産はできないでしょうが、ガスケアプローチがもっと広がってくれることを望みます。

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両親の教育

インゲン

人間以外の動物の子育ては、一般に巣立ちまでの期間が短く、そのためか子育てもオスメスが一緒でない場合も多く見受けられます。 しかし、人間の場合は2...

人間以外の動物の子育ては、一般に巣立ちまでの期間が短く、そのためか子育てもオスメスが一緒でない場合も多く見受けられます。
しかし、人間の場合は20年近い期間を要し、その間は親による様々な教育が必要となります。単に経済的な条件を確保し肉体だけの成長でよいとなればパートタイム父親の一夫多妻でも良いでしょうが、子供の幸せにとっては日常的に両親から生きる術を学ぶ環境が必要ではないでしょうか。
問題は産むことではなくて自立のための教育にあります。

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