心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
医療・健康・介護のコラム
人見知りの患者さん?…実は話したくても話せない病気の場合も
人見知りは乳幼児期に生ずる成長過程の1コマでしょう。しかし、大人でも診察室に不安そうに入室し、ほとんど言葉を発さない方もいます。
前回 は、医師に丸投げして、本人は何の意思も示そうとしない患者さんでは、医師としては積極的な治療方針を示しにくいというお話をしました。
無口すぎる患者さんには、医師も消極的になってしまうのです。
目や視覚に不愉快な症状があるために、人と会ったり話したりできないという症例に遭遇することがあります。眼科的には何ら異常はなく、その方がなぜ眼科を受診したのか、以前はわかりませんでした。しかし、心療眼科から見れば、これは確かに病気として考えるべきなのです。
社交(または社会)不安障害とは、簡単に言えば、人前で不安を感じたり、恐怖を感じたりして、極端に緊張し、そういう場面を避けたり、避けざるを得なくなる病態です。
体にいろいろな不調が随伴する場合もあり、目も体の一部ですから、目が痛い、
「そんなの自分もある。人前でスピーチする場面や、何か大事なことを上司にお願いするような場面で、声が震え、汗が出てドキドキし、お
よく似ているようですが、一定期間以上そういう状態が継続し、学校や会社などの社会生活に甚大な影響が出るところが違います。
私の長男は、小、中学校の当時、学校では全く声が出なかったそうです。家では普通に会話し、振る舞っていましたし、学校の成績も悪くはなかったので、親も担任も別段問題にしたことはありませんでした。
しかし、社会に出ると他人とのコミュニケーションが必須となりますから、具体的な支障が出てきました。同級の精神科医の診断は、「社交不安障害」でした。
やがて、本人がネットなどで調べて、自分の病気はこれだと示してきた病気があります。
「場面
自分の家庭などの安心できるところでは普通に話ができるが、それ以外の場面、社会的状況では言葉を発したくても発せない疾患です。
医学的分類では選択性緘黙症ともいい、社交不安障害と併存することが多いとあります。自分が置かれている場面や社会的状況に不安や恐怖があり、不適応状態になるのです。
治療は確立していませんが、医師はもちろん、周囲の人々が病気だと認め、理解することは改善への特に大切な要素です。
彼は病気を理解して以降、少しずつ克服していきているようで、この病気の知識を広める活動もしています。関心のある方は、 彼のブログ を参照してください。(若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)
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