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認知症「前段階」、半数は回復…高齢者4年間追跡調査

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認知症「前段階」、半数は回復…高齢者4年間追跡調査

 認知症の前段階と言われる「軽度認知障害(MCI)」の高齢住民を4年間追跡調査したところ、14%が認知症に進んだ一方、46%は正常に戻ったとの結果を国立長寿医療研究センター(愛知県 大府おおぶ 市)の研究班がまとめた。MCIと判定されても改善する例も多いことを示す結果で、近く米医学専門誌に発表する。

 研究は、認知症ではない65歳以上の同市住民約4200人を2011年から4年間追跡したもの。タブレット端末を用い、国際的なMCI判定基準をもとに約150項目に回答する形で認知機能を検査すると、当初時点で約740人(18%)がMCIと判定された。

 4年後に同じ検査を行うと、MCIだった人の46%は正常範囲に戻っていた。

 この検査は、〈1〉記憶力〈2〉注意力〈3〉処理速度〈4〉実行機能――の4項目で調べるが、MCIの中でも、1項目だけが低いタイプが正常に戻った割合は39~57%。複数の項目に問題があるタイプは20%台。MCIの中にも幅があり、問題のある項目が少ない方が、回復率が高い傾向がみられた。

 一方、4年の間に認知症と診断された人の割合は、MCIだった人では14%で、正常だった人の5%に比べ、大幅に高かった。

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認知機能検査画面の一例(国立長寿医療研究センター提供)

 調査をまとめた同センターの島田裕之・予防老年学研究部長は「高齢者でも認知機能が下がる一方とは限らない。今回の回復率は海外の研究から見ても想定の範囲内だが、認知症予防を目的にした運動教室を開くなど、大府市が高齢者の啓発に熱心なことが影響した可能性はある。認知症リスクを下げると言われる生活習慣病対策などの行動改善を心がけてほしい」と話す。

 研究班は今後、MCIから正常に戻った人にどのような特徴があるか、詳しく分析を進めたい考えだ。

 地域の認知症対策に詳しい山口晴保・群馬大名誉教授の話「調査参加者に健康意識が高い住民が多かったり、最初の検査で『認知機能が低め』と言われて生活習慣を改める人がいたりしたことで、良い結果が出た可能性はある。だが、MCIと判定されても認知機能を維持・改善できる可能性が決して少なくないと示したことは、超高齢社会の日本において有意義だ」

 軽度認知障害(MCI) 記憶力や注意力などの認知機能は低下しているが、日常生活には大きな支障が出ていない、認知症と正常の中間の状態を指す。国の推計(2012年)では、認知症高齢者は462万人、MCIの人は400万人。MCIは、Mild Cognitive Impairmentの略。

悲観せずに生活改善を

 近年、国を挙げて認知症対策が重視されるなか、注目されるようになったMCIというグレーゾーンの概念。自治体で高齢者の認知機能をチェックする例も出始め、中には「MCIの疑い」などと指摘されて「認知症に近づいた」とショックを受ける人もいる。ただ、MCIの経過は十分に解明されているとは言えない。

 認知機能がMCIから正常に戻る確率は、地域住民を対象にした海外の先行研究では10%台から50%台まで様々だ。

 認知症のリスク要因としては、糖尿病や脳卒中、うつ傾向、身体活動の低下などが指摘されている。従って、食事のバランスが良く、活動的で運動習慣のある人の方がリスクを減らせる可能性が高いとみられる。

 今回の住民調査ではMCIから改善する人が多かった。現時点では、一度判定されても悲観せず、前向きに健康的な暮らしを心がけた方がよさそうだ。

(医療部 高橋圭史)

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