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宋美玄のママライフ実況中継

コラム

「産まない」のではなく「産めない」社会の解決策は――日本卵子学会から

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「産まない」のではなく「産めない」社会の解決策は――日本卵子学会から

明治神宮外苑にある「にこにこパーク」(東京・港区)で砂遊びをする子どもたちです

 6月初旬の週末、沖縄県宜野湾市で行われた日本卵子学会に参加してきました。

 1泊留守にして帰宅したところ、娘は飛びついてきたのに、息子はかなりそっけなかったです。ところがお土産の沖縄マンゴーを出すと、息子も一瞬で満面の笑顔に。二人とも腰をくねくねさせて、踊りながら食べていました。

 生殖分野の学会に参加したのは初めてでしたが、大変勉強になりました。私自身もパネラーとして参加したイブニングセミナー「生殖医療の将来―人口減少社会における生殖医療の在り方―」では、少子化社会における生殖医療についてディスカッションが行われました。

 今回、パネルでご一緒した明治大学付属明治高校・中学校校長で人口学者の安藏伸治先生は、「少子化の理由は、結婚した男女が持つ子供の数は変わっていないけれど、結婚がしづらくなったこと」とお話しされました。未婚率は、非正規雇用の男性、それに高収入の女性が高めだそうです(高収入女性の希望に合った男性とのマッチングがうまくいかないのか、それとも男性が高収入の女性を避けているのでしょうか)。

 少し古いデータですが、2002年東京・品川区による調査によれば、30代前半の男性が望む世帯月収は、「手取りで30万~40万円」と答えた人が36.1%で一番多かったのに対し、女性は「同40万~50万円」と答えた人が27.0%で一番多く、次に多かったのが「60万~70万円」で24.3%だったそうです。

 男性より女性の方が世帯収入を多く望み、安藏先生の解釈では、男性は自分の収入で生活しようと考えるのに対し、女性は共働きをして世帯収入を多く確保したいと思っているとのことでした。長引く不景気の影響などにより、若い世代の雇用が不安定になったり、収入が少なくなったりしていますが、共働きを続けられるようにすることが結婚の、そして出産のサポートをすることが少子化社会に対する一つの解決策になるとのお話でした。

 日本産科婦人科学会によると、2014年に国内の医療機関で実施された体外受精の件数は39万3745件で、体外受精により生まれた子供の数はわずか4万7322人でした。

 世界で一番多く体外受精が行われているにもかかわらず、年齢のピークは39~40歳で、4割以上を40歳以上が占めるそうです。ここから、世界的に見ても妊娠率が低迷している背景の一端が見えます。

 さまざまな原因で結婚がしにくくなっている上に、望んでも子供が授からない時、生殖医療を受けるまでにタイムラグがあるようです。セックスレスや性機能障害を抱えたまま、どこにも相談できずに時間が過ぎていくカップルや、妊娠しづらいけれど西洋医学に頼ることに 躊躇(ちゅうちょ) するカップルは少なくないと思います。

 欲しい人が欲しい数の子供を持てるようになるための、少子化時代のさまざまな課題が見えました。生殖医療施設を受診するハードルが下がって、適切な時期に適切な医療が受けられるよう、私も情報発信を続けたいと思います。

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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5件 のコメント

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人口動態・産業構造の変化と晩婚化・少子化

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

補足すると、産業構造は人口ピラミッドや国内外の政治経済や外交の影響を大きく受けます。 例えば、医療費は国や企業の政治経済の影響を受けますし、昨今...

補足すると、産業構造は人口ピラミッドや国内外の政治経済や外交の影響を大きく受けます。
例えば、医療費は国や企業の政治経済の影響を受けますし、昨今は顕著なように高度医療技術は人材だけでなく工業技術が支えます。

一億総中流と言われた世代の、社会構造も銀行の金利も安定していた時代から、格差進行社会にシフトして、団塊世代の親と子では正社員制度の功罪への認識も含めて、認識のねじれの問題もあります。
当人だけでなく、家族のエゴやメンツも結婚や出産・育児の障壁ですね。

保険診療による医療費のフラット化があっても、年収200万円の人と2000万円の人と2億円の人で、教育費や医療費に使える金額はそれぞれ違います。
貯蓄額によっても変わります。
お金を沢山出せる人が減れば、人と施設とお金の集約の在り方も変わり、医療関係の雇用環境も変わります。
勿論、各都市やその郊外の人口構造や産業構造もインフラとともに変わっています。
駅直結型のマンションが増えているのもその一例ですね。

一般的に、自分が受けた程度の教育は受けさせたいと思うのが人情ですが、格差が進行すると高等教育を受けた者ほどそれが難しくなってしまい、経済的に産めないから産まないになって、少子化が進むのだと思います。

ということは、社会制度自体を変えるのに時間はかかっても、一部の人間の認識を変えたり、技術開発や廉価化に進ませることができれば、多少は問題解決に向かうのではないかと思います。

以前にも書かれていたように、保育所の問題や代替案、妊産婦死亡のさらなる減少の施策、高等教育のベースの廉価化あたりがキモになるのではないかと思います。
子供が増えるほどに、子供一人当たりのベースのコストは下がります。

生殖医療も含めて、どの程度が適切なサポートなのか意見も分かれると思いますが、多角的にやらないと状況は悪化するような気もします。

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高度文明化社会の与える交際と結婚リスク

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

36才ですが、私立医大の比較的貧乏学生で、超奥手で、トラブルもあり、僕と火遊びや恋愛、結婚や子作りを真面目にしたい子がいたのか知りません。 もし...

36才ですが、私立医大の比較的貧乏学生で、超奥手で、トラブルもあり、僕と火遊びや恋愛、結婚や子作りを真面目にしたい子がいたのか知りません。
もしも、相手が僕の人格や能力、医師免許に幻覚や妄想を見ていなければ、ゼロだと思っています。

妊娠の可能性だけでなく、同性同士の関係や家庭事情も含めて色々ありますし、動線や時間、思考回路のどこかを拘束するのは確かで、自由恋愛というのは条件付きの幻想です。

IT化や文明化で様々な拘束が増えすぎて、何かに真面目過ぎる人ほど、不自由に苦しむものかもしれません。

勉強や読書やサッカーと結婚していた20代は大学の権力闘争の不利益以外に不満はなく、女性がどうこうとは本気で思いませんでした。

自分を心から引き付ける相手や自分の望みや苦しみを理解してくれる人以外の勝手な我儘に付き合う時間やエネルギーなど無駄でしょう。

医師の世界だけでなく、高度文明化社会のサービスの高度化はOJTも含めて職業教育期間の延長=家事習得の遅れを意味し、安定収入とセットになりがちな事実を含め晩婚化・高齢出産を促進します。(結婚と仕事は一部対立関係)

恋愛と結婚は多くの場合に別物と頭では理解しても、実行フェーズでは難しい人もいると思います。
男女関係のトラブルは仕事のリスクになるからです。

晩婚化は家庭文化や生活スタイルの非柔軟性ともセットです。
要するに、バッドサイクルにはいるとこじらすということです。

電子メールやSNSとかでオープンの部分も増えていますが、バランスをとるために、内にこもる部分が生じてくるのも、人間の自然ではないかと思います。

乱数もありますが、お互いにリスクを背負ってどうこうと思わなければ、それはその程度の関係ということです。

出産も育児や教育もリスクもコストもあるので、それでも産みたいと思える社会制度と個人との出会いの問題だと思います。

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女の上方婚は進化の過程で身についた本能

miyagikenjin

>未婚率は、非正規雇用の男性、それに高収入の女性が高めだそうです(高収入女性の希望に合った男性とのマッチングがうまくいかないのか、それとも男性が...

>未婚率は、非正規雇用の男性、それに高収入の女性が高めだそうです(高収入女性の希望に合った男性とのマッチングがうまくいかないのか、それとも男性が高収入の女性を避けているのでしょうか)。

高収入女性は自分より上の男と結婚を望む(上方婚)。
検索すると識者の意見が。

上野千鶴子「エリート女の泣きどころは、エリート男しか愛せないってこと(笑)。男性評論家はよく、エリート女は家事労働してくれるハウスハスバンドを選べなんて簡単に言うけど、現実的じゃない。」
早大教授森川友義「東大女子に、交際相手に関するアンケート調査を行った結果、7割が交際相手は東大男子だった」
白河桃子「高学歴女子は自分より高学歴な男性は少ないし、自分が高収入だとそれを上回る男性もなかなか見つからない」
社会学者山田昌弘「高学歴の女性が、学歴の高くない男性を結婚相手として選ばないのは、そもそもそのような男性に魅力を感じないからである。「話が合わない」「物足りない」という言い方で、恋愛や結婚相手の対象から外してしまう。たまたま、妻が夫より高学歴という組み合わせのカップルがいても、その男性には学歴に代えられない仕事上の能力があるというケースがほとんどである。」


男性の非正規雇用で低収入の原因は新自由主義(ネオリベラリズム)による雇用破壊により『一部の勝ち組を除いた全体的な貧困化・未婚化・少子化』です。男性も女性も関係ない、生物学的に差はないとするジェンダーフリー思想による政策とネオリベ政策は表裏一体の災厄を日本にもたらした。
男女に性差はない、という迷信は医学的生物学的に否定・修正・改善が必要だ!

東洋経済オンラインにも関連する記事が。
・女性が直面する「稼ぐほど結婚できない」現実(荒川和久)
・激務の夫を選ぶ、キャリア女性の「自縄自縛」 専業主夫は女性活用の解決策にならない(中野円佳)

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